山城貞治(みなさんへの通信67)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その47)
(24)各学校のコンピューター使用については、教職員にVDT使用時の労働安全衛生基礎知識を教えるとともに、作業環境、使用時間などの労働省基準を上回ることはもちろん、日本産業衛生学会の「VDT作業に関する委員会報告」を尊重させる。
現在実施されているVDT健康診断を希望者だけに限定せず使用者全員が受診できるようにすること。
またVDT健康診断の内容を大幅に完全すること。また健康診断結果について集団対策を講じること。
各校に設置されている各種コンピューター教室は、VDT作業の手本となる環境を作ること。
については、京都府高労安対策委員会機関紙「教職員のいのちと健康と労働」」1999年5月で、次のようなことを知らせた。
4月に府教委が府立学校の教職員のコンピュータ操作可能人数などを調査しています。その事を聞いた教職員は、「みんながコンピュータを使わされているのに、府教委は、何を調査するのやろ」「府教委は、コンピュータを購入しないで教職員にコンピュータを買わしておいて、調査するだけ?」などの意見が出されています。
府教委は、教職員がコンピュータをどれぐらい操作できるかなどの調査を行っても教職員のコンピュータ労働に対する労働安全衛生対策とそのための調査はまったく行っていません。
そこで、今後順次コンピュータ労働(VDT労働)の問題をとりあげて行きたいと思います。
コンピュータが病的なストレスを生む
一つの条件であることが明らか
「ストレスとつきあう法ー心理学からのアドバイスー ゆうひかく選書」に衛生学・人間工学の立場から中迫勝氏が、コンピュータ労働について以下の点を指摘されています。
「テクノストレスとは、文字どおりテクノロジーによって生じる病的ストレスと言う意味に使われています。コンピュータ技術とストレスの関連について、最近20年間の研究調査の成果を調べてみると、コンピュータ技術が病的なストレスを生む一つの条件であることが明らかになってきます。
二つに分かれるコンピュータ技術
ここでいうコンピュータ技術は、大別してコンピュータ機器そのものにかかわるものとのコンピュターの頭脳となるシステムに関わるものに分けることが出来ます。
まず、コンピュータと関わりのある人々におこるさまざまな障害について少し見てみましょう。
コンピュータの精神ストレスは、精神疲労による神経症傾向を示す人が多い
精神ストレスの代表事例としてテクノストレスがしばしば引用されますが、コンピュータ作業者の精神ストレスは、神経症のような傾向を示す人が多く、とくに、プログラマー、システムエンジニア、管理職に携わる人の半数以上が心のカウンセリングが必要であるという報告もあります。
その大半は強い精神疲労に起因しています。
自律神経失調症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍
高血圧などを引き起こす心身症
またストレス症状として全身がだるい、動悸がする、頭が痛い、頭が重いのほか不安、いらいら、夜眠れないなどを訴える自律神経失調症、これらの症状に加えて胃潰瘍、十二指腸潰瘍、高血圧などを引き起こす心身症があります。
ブロードのいう『テクノ依存症』『テクノ不安症』は神経症の範疇には入るもので、さまざまの不安、葛藤、焦燥感などのストレスが核になっています。
『テクノ依存症』は仕事人間がかかりやすく、疲労によって精神がむしばまれて、自分の思考が硬直していくことに気がつかなくなってしまいます。
あげくの果ては、仕事の能率は極端に低下し、ミスを犯すことが多くなってきます。 『テクノ依存症』の人々の行動様式は日本の仕事人間のそれと著しく類似している点が多いようです。 ー略ー 『テクノ不安症』は、職場へのコンピュータ導入によって生じる機械に対する不安、仕事に対する不安・心配・恐怖が核になっていることが多いようです。」
筋骨格系の病気と目の疲労
「コンピュータの利用と関連した『筋骨格系の病気』と『目の疲労』も先進工業国で大変大きな社会問題になっています。
さて、目の疲労ですが、コンピュータ作業者に特異な疲労症状は、目が疲れる、目がいたい、目が赤く充血する、目やにがでる、眩しく感じる、涙がよくでる、ものがぼやけてみえるなどの愁訴があります。目の疲労は画面や文字の注視と関連しています。 特にコンピュータの画面の文字がぼけていたり、文字が暗すぎるといった画質の悪い条件や照明環境の悪い条件が重なると目の疲労がよりいっそう促進され、症状が増悪します。
最後に、『筋骨系の病気』について見てみましょう。
この病気は医師、専門家、研究者の中では『頸肩腕障害』と『背腰痛』として広く知られ、アメリカやヨーロッパの諸国でもコンピュータ・オペレータの中にこのような障害を持つ人や障害を訴える人が急増しています。
特にアメリカでは全労働者の500人に一人が手、手首、腕等の局所筋に痛みやだるさの症状をもち、機能障害を受けていると言われています。1989年度に発症した機能障害者数は職業病と診断された労働者28万4000人の半数にものぼり、その数は十分な予防対策がないとこれからますます増加すると予想されます。」
と紹介し、さらに、
コンピュター労働は連続1時間を超えないようにし
10~15分の休止時間を、と労働基準監督署局指針
京都労働基準局は、すでにVDT(Visual or Video Display Terminals )作業の指針を出し、1988(昭和63)年の調査でもコンピュター労働によって「目の疲れや肩、腕、手指のしびれ、背中、腰の痛み、精神の疲れ」などの疾病がますます増えて行くとして、「VDT作業のための労働衛生上の指針」(労働省1985・昭和60年)を遵守し「VDTによる疾病の予防を万全にするよう」にという文章を配布しています。
しかし、これらの「指針」は、京都府・京都府人事委員会・府教委によって教職員にはほとど知らされていません。
そこで、「VDT作業のための労働衛生上の指針」の概略と、この指針に基づいて自治労連A市職労が1986(昭和61)年3月に当局と結んだ「VDT作業に関する協定書」を掲載します。
労働省労働基準局「VDT作業のための労働衛生上の指針」の一部紹介
作業環境管理
(1)照明及び採光
室内は、出来るだけ明暗の対象が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないこと。(以下2点)
(2)グレアの防止
CRTディスプレイは、作業者の視野内には高輝度の照明器具・窓・壁面や点滅する光源等が
なく、かつCRTディスプレイ画面にこれらが映り込まないような場所に設置すること。(以下5
点)
(3)騒音伝ぱ防止
プリンターなどから不快な騒音が発生する場合には、騒音伝ぱの防止措置を講じること。
(4)その他
換気、空気調和、静電気除去等について事務所衛生基準規則に定める措置をはじめとする必
要な措置を講じること。
作業管理
・作業時間は、「視覚負担をはじめ心身の負担を軽減するため、できるだけCRTディスプレイ画面を注視する時間やキーを操作する時間が短くなるように配慮することが望ましく」「一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業時間までの間に10~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けること。」などが指導されています。
そのほかに、VDT機器等、CRTディスプレイ.キーボード.イス.机または台.機器等の調整。VDT機器等及び作業環境の維持管理、日常点検と調整.定期点検.清掃健康管理、健康診断.労働衛生教育などが明らかにされています。
VDT作業に関する協定書
VDT作業に関し、A市とA市職員労働組合は、下記のとおり協定する。1986年3月
記
1,事前協議制について 労働条件にかかわる事項について事前協議し、合意するものとする。
1,研修・教育について VDT作業に従事する職員に対して、労働安全衛生教育及び機器操作等について職場内研修を実施する。
1,具体的作業基準について
(1)表示画面は前後及び上下に動かせるものとし、反射防止、放射防止をほどこし、文字の大きさ、文字フォント等配慮するものとする。
(2)入力・操作装置は、表面を眩光及び鏡面反射防止をほどこしたものとし、表示表面装置と分離し、作業者が高さ等を容易に調整できるものとする。
(3)椅子は、背もたれのあるものとし、高さ、角度が容易に調整できるものとする。
(4)作業卓、書見台等作業のための適正な設備を設けるものとする。
(5)作業時間は、常時従事者について原則として4時間以内とする。一連続作業時間は、おおむね45分とし、15分程度の作業休止時間をとるも のとする。
(6)照度は、500~600ルクス程度を確保するものとし、採光や照明が直接画面に入らないような環境を整備するものとする。
(7)従事職員の健康管理は、定期的な健康診断を行うなどの対策をとるものとする。
①健康診断は、常時従事者について実施するものとし、配置後1ヶ月以 内及び年1回の診断を行うものとする。
②健康診断の内容は、眼科検診(視力・調節機能等)及び頸肩腕検診とする。
③健康相談を実施し、健康障害の予防を図っていくものとする。
(8)妊娠中の女子職員は、常時従事をさせないものとする。
(9)新しい知見の収集に努め、今後の開発や研究の成果の動向をふまえ、検討を加えるものとする。
教育と労働安全衛生と福祉の事実は、ブログを変更しましたが、連続掲載されています。以前のブログをご覧になりたい方は、以下にアクセスしてください。
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http://kyouikutorouann.blogspot.com/
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政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その47)
(24)各学校のコンピューター使用については、教職員にVDT使用時の労働安全衛生基礎知識を教えるとともに、作業環境、使用時間などの労働省基準を上回ることはもちろん、日本産業衛生学会の「VDT作業に関する委員会報告」を尊重させる。
現在実施されているVDT健康診断を希望者だけに限定せず使用者全員が受診できるようにすること。
またVDT健康診断の内容を大幅に完全すること。また健康診断結果について集団対策を講じること。
各校に設置されている各種コンピューター教室は、VDT作業の手本となる環境を作ること。
については、京都府高労安対策委員会機関紙「教職員のいのちと健康と労働」」1999年5月で、次のようなことを知らせた。
4月に府教委が府立学校の教職員のコンピュータ操作可能人数などを調査しています。その事を聞いた教職員は、「みんながコンピュータを使わされているのに、府教委は、何を調査するのやろ」「府教委は、コンピュータを購入しないで教職員にコンピュータを買わしておいて、調査するだけ?」などの意見が出されています。
府教委は、教職員がコンピュータをどれぐらい操作できるかなどの調査を行っても教職員のコンピュータ労働に対する労働安全衛生対策とそのための調査はまったく行っていません。
そこで、今後順次コンピュータ労働(VDT労働)の問題をとりあげて行きたいと思います。
コンピュータが病的なストレスを生む
一つの条件であることが明らか
「ストレスとつきあう法ー心理学からのアドバイスー ゆうひかく選書」に衛生学・人間工学の立場から中迫勝氏が、コンピュータ労働について以下の点を指摘されています。
「テクノストレスとは、文字どおりテクノロジーによって生じる病的ストレスと言う意味に使われています。コンピュータ技術とストレスの関連について、最近20年間の研究調査の成果を調べてみると、コンピュータ技術が病的なストレスを生む一つの条件であることが明らかになってきます。
二つに分かれるコンピュータ技術
ここでいうコンピュータ技術は、大別してコンピュータ機器そのものにかかわるものとのコンピュターの頭脳となるシステムに関わるものに分けることが出来ます。
まず、コンピュータと関わりのある人々におこるさまざまな障害について少し見てみましょう。
コンピュータの精神ストレスは、精神疲労による神経症傾向を示す人が多い
精神ストレスの代表事例としてテクノストレスがしばしば引用されますが、コンピュータ作業者の精神ストレスは、神経症のような傾向を示す人が多く、とくに、プログラマー、システムエンジニア、管理職に携わる人の半数以上が心のカウンセリングが必要であるという報告もあります。
その大半は強い精神疲労に起因しています。
自律神経失調症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍
高血圧などを引き起こす心身症
またストレス症状として全身がだるい、動悸がする、頭が痛い、頭が重いのほか不安、いらいら、夜眠れないなどを訴える自律神経失調症、これらの症状に加えて胃潰瘍、十二指腸潰瘍、高血圧などを引き起こす心身症があります。
ブロードのいう『テクノ依存症』『テクノ不安症』は神経症の範疇には入るもので、さまざまの不安、葛藤、焦燥感などのストレスが核になっています。
『テクノ依存症』は仕事人間がかかりやすく、疲労によって精神がむしばまれて、自分の思考が硬直していくことに気がつかなくなってしまいます。
あげくの果ては、仕事の能率は極端に低下し、ミスを犯すことが多くなってきます。 『テクノ依存症』の人々の行動様式は日本の仕事人間のそれと著しく類似している点が多いようです。 ー略ー 『テクノ不安症』は、職場へのコンピュータ導入によって生じる機械に対する不安、仕事に対する不安・心配・恐怖が核になっていることが多いようです。」
筋骨格系の病気と目の疲労
「コンピュータの利用と関連した『筋骨格系の病気』と『目の疲労』も先進工業国で大変大きな社会問題になっています。
さて、目の疲労ですが、コンピュータ作業者に特異な疲労症状は、目が疲れる、目がいたい、目が赤く充血する、目やにがでる、眩しく感じる、涙がよくでる、ものがぼやけてみえるなどの愁訴があります。目の疲労は画面や文字の注視と関連しています。 特にコンピュータの画面の文字がぼけていたり、文字が暗すぎるといった画質の悪い条件や照明環境の悪い条件が重なると目の疲労がよりいっそう促進され、症状が増悪します。
最後に、『筋骨系の病気』について見てみましょう。
この病気は医師、専門家、研究者の中では『頸肩腕障害』と『背腰痛』として広く知られ、アメリカやヨーロッパの諸国でもコンピュータ・オペレータの中にこのような障害を持つ人や障害を訴える人が急増しています。
特にアメリカでは全労働者の500人に一人が手、手首、腕等の局所筋に痛みやだるさの症状をもち、機能障害を受けていると言われています。1989年度に発症した機能障害者数は職業病と診断された労働者28万4000人の半数にものぼり、その数は十分な予防対策がないとこれからますます増加すると予想されます。」
と紹介し、さらに、
コンピュター労働は連続1時間を超えないようにし
10~15分の休止時間を、と労働基準監督署局指針
京都労働基準局は、すでにVDT(Visual or Video Display Terminals )作業の指針を出し、1988(昭和63)年の調査でもコンピュター労働によって「目の疲れや肩、腕、手指のしびれ、背中、腰の痛み、精神の疲れ」などの疾病がますます増えて行くとして、「VDT作業のための労働衛生上の指針」(労働省1985・昭和60年)を遵守し「VDTによる疾病の予防を万全にするよう」にという文章を配布しています。
しかし、これらの「指針」は、京都府・京都府人事委員会・府教委によって教職員にはほとど知らされていません。
そこで、「VDT作業のための労働衛生上の指針」の概略と、この指針に基づいて自治労連A市職労が1986(昭和61)年3月に当局と結んだ「VDT作業に関する協定書」を掲載します。
労働省労働基準局「VDT作業のための労働衛生上の指針」の一部紹介
作業環境管理
(1)照明及び採光
室内は、出来るだけ明暗の対象が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないこと。(以下2点)
(2)グレアの防止
CRTディスプレイは、作業者の視野内には高輝度の照明器具・窓・壁面や点滅する光源等が
なく、かつCRTディスプレイ画面にこれらが映り込まないような場所に設置すること。(以下5
点)
(3)騒音伝ぱ防止
プリンターなどから不快な騒音が発生する場合には、騒音伝ぱの防止措置を講じること。
(4)その他
換気、空気調和、静電気除去等について事務所衛生基準規則に定める措置をはじめとする必
要な措置を講じること。
作業管理
・作業時間は、「視覚負担をはじめ心身の負担を軽減するため、できるだけCRTディスプレイ画面を注視する時間やキーを操作する時間が短くなるように配慮することが望ましく」「一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業時間までの間に10~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けること。」などが指導されています。
そのほかに、VDT機器等、CRTディスプレイ.キーボード.イス.机または台.機器等の調整。VDT機器等及び作業環境の維持管理、日常点検と調整.定期点検.清掃健康管理、健康診断.労働衛生教育などが明らかにされています。
VDT作業に関する協定書
VDT作業に関し、A市とA市職員労働組合は、下記のとおり協定する。1986年3月
記
1,事前協議制について 労働条件にかかわる事項について事前協議し、合意するものとする。
1,研修・教育について VDT作業に従事する職員に対して、労働安全衛生教育及び機器操作等について職場内研修を実施する。
1,具体的作業基準について
(1)表示画面は前後及び上下に動かせるものとし、反射防止、放射防止をほどこし、文字の大きさ、文字フォント等配慮するものとする。
(2)入力・操作装置は、表面を眩光及び鏡面反射防止をほどこしたものとし、表示表面装置と分離し、作業者が高さ等を容易に調整できるものとする。
(3)椅子は、背もたれのあるものとし、高さ、角度が容易に調整できるものとする。
(4)作業卓、書見台等作業のための適正な設備を設けるものとする。
(5)作業時間は、常時従事者について原則として4時間以内とする。一連続作業時間は、おおむね45分とし、15分程度の作業休止時間をとるも のとする。
(6)照度は、500~600ルクス程度を確保するものとし、採光や照明が直接画面に入らないような環境を整備するものとする。
(7)従事職員の健康管理は、定期的な健康診断を行うなどの対策をとるものとする。
①健康診断は、常時従事者について実施するものとし、配置後1ヶ月以 内及び年1回の診断を行うものとする。
②健康診断の内容は、眼科検診(視力・調節機能等)及び頸肩腕検診とする。
③健康相談を実施し、健康障害の予防を図っていくものとする。
(8)妊娠中の女子職員は、常時従事をさせないものとする。
(9)新しい知見の収集に努め、今後の開発や研究の成果の動向をふまえ、検討を加えるものとする。
教育と労働安全衛生と福祉の事実は、ブログを変更しましたが、連続掲載されています。以前のブログをご覧になりたい方は、以下にアクセスしてください。
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