教育としてのろう教育・聴覚障害児教育・障害児教育
ー 京都のほどんど知られていない障害児教育から学ぶ教育 ー
特別と別の違い
※ 当時、京都府立ろう学校高等部では、職業学科( 和裁 紳士服 などなど)の他に別科という二つの学科が置かれていた。
別科というのは、ろうで重複の生徒が学ぶクラスとされていた。
しかし、中学部ではろうで重複の生徒は特別学級という名称だったのに「別科」という名称そのものは、学科としても、生徒たちの言い方にも「違和感」を与えるものであった。
手話で、職業は主として「仕事」として表現されたが、「特別」は、海軍将校などの袖襟の楕円形の刺繍で表現された。
すなわち、特別とは、スペシャルの意味合いを持ち表現されたが、別科では、「別」という手話表現で表されていた。
そのため、高等部の多数の生徒は、職業課に属していたため「別科」は、「(自分たちと)別の科」の意味合いとして表現されていた。
四十数年ぶりにろう学校高等部の大幅学科編成
この名称や高等部の学科編成は、数年前から大幅に編成され「授業拒否」の時に生徒たちが望んだ「耳の不自由でない人達と同じようになるため」の学科が創設されるようになってきているが、教育内容面での実践ははじまったばかりである。
しかし、このことでも現在の京都府教育委員会には、大きなぶれが見られる。
四十数年余にして初めてろう学校高等部の大幅学科編成がはじめられことは、それなりに評価出来るかもしれないが、遅きに失した、とも言える。
だが、当時の高等部の生徒は、「別科」の生徒に対する考えを率直に語り、それぞれがその考えを変えていった記録が残っている。
この時の討論は、以下の文章で終わっているがその後ろうあ協会の役員になった高等部の生徒たちは、「別科卒業」の生徒を暖かく迎え入れ、各行事には、誘い合い「ろうで重複」の人たちの生きがいを支え合うようになっていく。
別科(ろうで重複)の生徒のことについて生徒会の討論記録から
司会 昨年7月、高二年生は海へ行く計画をたてていたが、別科の生徒が一緒に行くことは拒否するということがあったが、今日はそのことから話し合いたいと思います。
男 別科の生徒は経済的にめぐまれていない人が多いと思う。
一緒に行ってもよかったが、お金のない人は苦しいと思うので断わった。
女 別科の生徒は父母が非常にかわいがっている。一緒に行ってもしものことがあったら、とても責任がもてない。
男 別科の人は言ったことがよくわからないから、一緒に海へ行くと、とても危 い。
男 H君の意見に反対。
経済的に苦しいから断わるのでなくて、それなら皆がカンパをやってでも一 緒に行くのが当り前ではないか。
別科と一緒に行くのが嫌だという人がいたのは事実
女 一部の生徒には別科と一緒に行くのが嫌だという人がいたのは事実だ。
ふらふらしていて足手まといになるのも困るし、それではせっかく海へ行っても楽しくないという理由からだ。
しかしこれは、私も含めて反省しなければならない。
〈注 海へ行く云.々は、臨海学習の計画を二年生のホームルームで立案した時のこと。
別科生が一緒だったら行きたくないという生徒が多数あって、この計画は流れてしまったのだそうである)
司会 昨年秋の遠足の時、1年の人は別科の人と一緒にバスに乗ることに反対し、 3年生に説得され、しぶしぶ同意したということがあったが、これについて ……
何だか後あじが悪い気持が
男 話をしても面白くない。
服装、態度もだらしない。
別科の生徒より三年生の生徒と一緒の方が楽しいというのが大部分考えだった。
一部の女子の中には、別科と一緒でもかまわないという人があったが……。
男 3年はそのさわぎを知り、ふんがいして1年の代表と話し合い、説得した。
別科の人は大へん怒って1年の人と口論した。
3年生が中に入って、1年生がどうしても反対なら3年生と一緒にするからといって結末をつけたが、1年生の人はもっと考えてほしかった。
女 あの時は何だか後あじが悪い気持がした。
3年生の人も1年の時は、今の1年と同じように別科の人を差別的な目でみていたが、だんだんわかってきた。
仲良くしないのは悲しいこと
別科の人は学力でおくれているとはいえ、それは彼らの責任ではない。
そんなことがだんだんわかってくると、別科の人と話をするのが、けっこう楽しい。
ろうあ者同志が仲良くしないのは悲しいことだ。
司会 ほかに。
男 この前、2年の1組と2組がちょうど同時に自習時間となった。
それで1組と2組が相談して修学旅行の話し合いをしたが、あとで、一緒に 修学旅行に行くことになっている別科の人が、黙ってやるとはけしからん、と怒ってきた。
女 終ってから別科の人に、その内容を伝えたが、別科の人は1組、2組だめだめ、と言って……。
男 1組と2組で相談を開く前に、別科の人に一緒に開くことが出来ない理由を 説明してあげればよかったのではないか。
女 しょうと思ったが、別科は授業がはじまっていたので出来なかった。
別科の人に秘密で相談したのではない。
しかし別科の人はどう説明しても聞いてくれない。
別科の人に対して特別な感情(差別に近い意識)をもっていることは事実だ
男 若し1組と別科が自習だったら、旅行の相談を一緒にしただろうか。
たとえ別科の時間の調整が出来ていたとしても、やらなかったのではないか。
司会 ともかく、みんなは別科の人に対して特別な感情(差別に近い意識)をもっていることは事実だと思う。
それでは、これをどうしたらよいのか話し合ってみたい。
話し合いだけでは
仲良くなれない
女 2年生は、卒業式がすんだ後、別科の人も一緒に2年生全員で話し合いをもつことにしている。
しかし、この話し合いだけでは仲良くなれない。
男 昼休みでも別科の人と気安く話し合うべきである。
男 それはよくわかるし同感。
しかし、話し合うだけでは、別科の人はまいってしまう。
男 やはり別科の人達の中に入りこむことが大切。
そのためには話し合うことも大切だし、一緒に遊ぶことも大切だ。
日曜日ハイキングに行ったり、いろいろ考えられると思う。
司会 もうそろそろ終りにしたい。
心のふれ合いが大切だと思います。どうも御苦労さま。
( つづく )
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