言語指導の方法論に翻弄されていくろう児たち
( 早期教育・インテグレーション・言語指導の問題と課題 ③ )
教育としてのろう教育・聴覚障害児教育・障害児教育
ー 京都のほどんど知られていない障害児教育から学ぶ教育 ー
口話教育 1965年前後ろう学校がすすめていた口話教育(対応教育)の理屈と実際
ろう幼児に対して
全体的成熟を遅らせない配慮して しかも語の習得を
(尚残る問題として、どれだけの期間をかければろう児と耳の聴こえる子供たちの間の接点が出来るか、という問題がある)
これについては、私たちは耳の聴こえる子供の言語的基礎が確立されるまでの期間と同じ期間にろう児にも言語の基礎を確立してやる必要があると考えている。
この時間的な可能性の問題は耳の聴こえる子供がランダムに受ける言語刺激の中から語を拾い出し、語と語の間の統辞法を身につけていく過程を見る時、彼らの概念化、法則化の能力の発達に則してマチュリティの原則の枠内ですすめてことが、ろう幼児に対して、全体的成熟を遅らせない配慮して、しかも語の習得をその統辞法の習得を計画的に援助してやれば、聴覚の障害というハンディを克服できると私たちは考えている。
京都ろう学校幼稚部における言語指導の方法論
これについては、もう私たちにとっては過去のものとなったが、ろう教育モノグラムNO7「言語入門期のプログラム」をつくり、実践してその可能性を証征した。
全ゆる言語指導に関する効果的評価法に先立つものは、ろう児に対する耳の聴こえる子供に劣らず伸び得るものだという評価と認識であると考えている。
記号から入って
順次高次に条件づけて音声記号を駆使できるように
京都校における言語指導の方法論
1,言語の記号的側面について
原則的については、既述のとおり、ろう児の残存感覚にとって無理と抵抗の最も少ない記号から入って順次高次に条件づけて音声記号を駆使できるように導いてゆく立場をとっている。
2才児教育相談( 週一回、1h、 個別指導)
A,ここでは、まず身振り言語の積極的奨励をする。
そのねらうところは、
① 言語の残存とその有効性を意識させる。
② 経験の概念化をたすけ、言語の巾広い土台をつくる。
③ 身振り言語の細分化と身体機能訓練を併行し、将来、音声言語に必要な 音器の発達への伏線をつくる。
B,次に視覚的な記号の識別訓練をする。
そのねらうところは、
① 静止した且、2才児の知覚識別力の枠をこえない記号を利用して記号の 視覚識別訓練をする。
② 色と形の合成から成る口形図を単なる模倣ではなく、手がかりとして口 形表出できる訓練をする。
③ 最終のねらいは、日本語の音韻体系に叫応した彼等なりのCueを口形又 は、口声による音韻意識を頭の中につくっていく。
2歳児の発達と言語 その理論と実践のはざま
※ 2歳児の言語獲得について、各論になると極めてはっきりとした差異が見られるようになっていく。
今まで理屈と記述したのは、論理ではないからである。
このことは、現在の多くの研究者が教育論理なり、教育心理なりをさかんに振りかざしているが、具体的実践を明らかにしている研究者は極めて少ない。
その点で、「理屈」と「方法論」を明らかにしていた50年余前の幼稚部の教師のほうが正直であるかも知れない。
しかし、現在も過去も教育の分野で教育理論と教育実践の双方向からの検討は極めて少なかったのではないだろうか。
2歳児の言語指導の方法は、2歳児の発達を充分踏まえたものと言えるだろうか。
また、
「身振り言語を駆使するなら、経験や概念の発達診断、推理の思考の発達において少なくとも幼児段階の精神発達で遅れを残すことはないはずだということを私たちに教えてくれるのである。」
という引用をしながら、
「将来、音声言語に必要な音器の発達への伏線をつくる。」
ということは、
「身振り言語」を解消する
ということであり、身振り言語を肯定したものでないことにも注目して欲しい。
方法論は、子どもたちが方法通りに行かなかった場合は、すぐ方法やり方に問題にされ、基本的な考え=理論を見直すことはほとんどない。
ここに、ろう教育の内包していた重大な問題がある。
( つづく )
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