2012年3月12日月曜日

後藤勝美さん 知ろうとも考えようともしない姿勢が最大のバリアと主張


Once upon a time 1969

 後藤さんとは、画のことだけではなく、障害者の多くの問題を話した。
 例えば、N氏の市会議員が病気・手術で声が出せないということで代読・文章質問しようとしたところそれが断られたという問題を我がこととして取り組んだことが刻々と報告されてきた。

   市民から選ばれた議員が声が出ないとして質問させない

 障害者に優しい街づくり、などときれい事を言うが、市民から選ばれた議員が声が出ないとして質問させないのは、議員を否定するものではないのか、障害者を否定することでもある、と後藤さんは次から次へとメールの報告が来た。

 それらの数あるうちの二つをこれから書いておきたい。

  せめて字幕をつけて欲しいのねがいもむなしく 

 某放送局で毎週、ろうあ者が見る番組がある。日本ろうあ連盟の永く険しい取り組みの中でやっと実現した聴覚障害者のための短い番組である。
 それが終わったあとすぐ、○○美術館という放送がはじまる。


 この番組は、画家としても、芸術を志す後藤さんとしても是非ともみたい番組である。
 そうでなくても、聴覚障害者のための番組が終わり、チャンネルをそのままにしておくと自然と○○美術館が眼に飛び込んでくる。
 でも、この番組は手話通訳もなければ字幕もない。
 後藤さんとしては、画家になる気持ちを堪えていた時から、せめて字幕をつけて欲しいというねがいが強かった。

    喜びもつかの間

 だから25~30年も前から某放送局に○○美術館に何度も何度も字幕を!との要求を全日本ろうあ連盟としても申し入れた。

 番組編成で、新○○美術館という名称が変わる。
 これできっと、字幕がつくという喜びでテレビを見た。

 何ら変わっていなかった。

 ろう者なんぜ見てくれんでもええ!と言う態度で、怒りは消えなかったという。
 
  予算がない 前日録画したものを翌日放映するから無理

 全日本ろうあ連盟の役を降りてもその気持ちは変わらず、いやさらに激しくなった。
 以前、画家でろうあ者だった人の特集を○○美術館が放送した時に、これは字幕がつくだろうと楽しみにしていた。
 だが、付かずに録画して手話通訳してもらったことがある、ことを思いだして視聴者相談センターにFAXした。


 ところが、
1,予算がない。
2,○○美術館は特集番組を作ることが多く、前日録画したものを翌日放映することも多く字幕なんてとても無理。
との返事が来た。

 どうしらいい、どう思う、との問い合わせのメールがやっぎばやに来た。
 その間に、後藤さんは、視聴者相談センターへ一応再質問及び逆質問のファクスを送信した。(B5の用箋三枚)
[○○まるの○○美術館はぼくもファンでした松本竣介の特集のときはビデオにとって友人に聞いてもらって音声を文字に変えてもらった苦労した。
 ○○美術館で字幕を要望しているのに受けとめてもらえないもどかしさと怒りを話しました。そのあと貴放送局関係者からはこっそり教えてくれました。苦情メールやファクスは誰も目を通さないこと、字幕を入力する人がいないことなど。後藤さん、頑張ってください。]
と。


           知ろうとも考えようともしない姿勢が最大のバリア

 その後後藤さんから、
やはり窓口処理で終わっていて、直接責任者には「声」は届いてないんだ。そが現実的問題。
 ようするに放送局のよく使う手の「言い訳」の一つに、見る人が限られている、見る人が少ない、云々レベルでなく(又は次元でもない)ろう者には「見る」以前の問題として「その番組内容が知ること」にバリアがたちはだかっていることを気がついていない。


 いや、知ろうとも考えようともしない姿勢が最大のバリア。
 逆に言えば他のテレビ番組に字幕化がどんどん進んで(?)いるのがなぜなのか?なぜか、○○美術館だけ後廻しの感じだ。加えて回答には「向こう10年かけて~実現を」と言う。一体やる気が本当にあるのか!?と聞きたい。
という返事があった。

   文字放送は可能  上層部に要望を

 この頃、私はDVD手話通訳者のための健康快復体操を作るため、大阪に頻繁に行って元テレビ局関係者との打ち合わせをさいていたので、

「○○美術館に字幕を入れることはそんなに難しいことではなくなっている。費用もかからない。放送には必ず、アナウンサー用の台本を作るので、それをそのまま文字として画面に出してもいいはず。前日撮影しても、放送日に撮影しても文字放送は可能」

と後藤さんに連絡し、視聴者相談センター宛てではなく、もっと違う上層部に要望するように連絡した。

 後藤さんはすぐ行動した。

 そのことを忘れていて、ふっと思いだしてテレビをつけたら新○○美術館は、文字放送していた。
 後藤さん、やったじゃないか、と言いいたかったが、後藤さんはこの世にいななっていた。

 放送局ではすぐ実現できるのに、後藤さんが言っても聞かず、放送局の上層部から言われたら実現する狡さが、哀しくて、残念で、星のない夜空を見上げた日のことが忘れられない。





後藤勝美さんについては、以下のホームページをご参照ください。
*********************

http://www.gayukobo.com/
**********************

0 件のコメント: