2012年4月15日日曜日

だれも責めない 怒りと哀しみを堪えた時期がやってきた


Once upon a time 1969

 Nさんが、A鉄工所近くの自分の家で相談しようじゃないか、と言った時はみんなに対する不信がほとんどだったと後で言った。

 みんなもNさんの誘いに不安を感じたが、ろうあ者DさんやEさんの二人をこれ以上放っておくことは出来ない、と思い、おそるおそるNさん宅に集まった。もちろん、手話通訳もよばれた。

               知恵を出し合って表現出来た手話

 ストライキという手話をどう表現するのか。

 同盟罷業(どうめいひぎよう)と漢字で書くが、結束・仕事・しない(肘を後ろにやって断る)。

 いや、野球のストライク、の動作でいいのではないか。(もともと英語の意味は、正しい、正当という意味であるからそれでもいいが……)


まあ、ストライキは、指文字で ス・ト としたらいいのではないか。
 ロックアウトは手話でどう表現するのか。

 これにはみんな頭を抱え込んでしまった。
 だが、集まれば知恵が出てくるもの。

 労働・断る(右手を少し曲げて、左手を開いてはねつける)が、一番意味的にも手話のやりやすさから言ってもピッタリだ。

   それまでと違って  Nさんは、カンカンになって怒り出した

 このような話からはじまる相談に、Nさんは次第に身を乗り出してきた。 
 しかし、A鉄工所勤続20年を超えるEさんからみんなに申し訳なさそうに

 家族から厳しい説得があり、会社の作った第2組合に行くように言われ続けて、フンと言ってしまった。

 病院に入院中のMさんの病床に家族がやってきて、説得。

 Mさんは、わけが分からないけれど家族が言うので第2組合に行くと約束した。

と言い出した。

 すると、Nさんは、カンカンになって怒り出し、

「そんなん 本人ぬきに会社が親や家族に電話とるのに違いない」
「第1組合に居たら、会社首になるいうとおるみ決まってる。」


と言っていたことと逆なことを言い出したので、みんながびっくり。

           黙り込んでさびしい顔で、Eさんの手話をみる

 Eさんは、ますます泣き出さんばかりの顔になり、

「ロックアウトでは、みんな仕事が出来なくなり、会社が勝つだろう。」
「私は早く仕事がしたくてたまらない」

「第1組合は、若い人ばかり。第二組合は世帯者が多い」

「私も家族を抱えている…… 」




 みんな黙り込んでさびしい顔で、Eさんの手話をみた。


 でも だれひとりEさんを責める人はいなかった。
 

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