Once upon a time 1969
Nさんが、A鉄工所近くの自分の家で相談しようじゃないか、と言った時はみんなに対する不信がほとんどだったと後で言った。
みんなもNさんの誘いに不安を感じたが、ろうあ者DさんやEさんの二人をこれ以上放っておくことは出来ない、と思い、おそるおそるNさん宅に集まった。もちろん、手話通訳もよばれた。
知恵を出し合って表現出来た手話
ストライキという手話をどう表現するのか。
同盟罷業(どうめいひぎよう)と漢字で書くが、結束・仕事・しない(肘を後ろにやって断る)。
いや、野球のストライク、の動作でいいのではないか。(もともと英語の意味は、正しい、正当という意味であるからそれでもいいが……)
まあ、ストライキは、指文字で ス・ト としたらいいのではないか。
ロックアウトは手話でどう表現するのか。
これにはみんな頭を抱え込んでしまった。
だが、集まれば知恵が出てくるもの。
労働・断る(右手を少し曲げて、左手を開いてはねつける)が、一番意味的にも手話のやりやすさから言ってもピッタリだ。
それまでと違って Nさんは、カンカンになって怒り出した
このような話からはじまる相談に、Nさんは次第に身を乗り出してきた。
しかし、A鉄工所勤続20年を超えるEさんからみんなに申し訳なさそうに
家族から厳しい説得があり、会社の作った第2組合に行くように言われ続けて、フンと言ってしまった。
病院に入院中のMさんの病床に家族がやってきて、説得。
Mさんは、わけが分からないけれど家族が言うので第2組合に行くと約束した。
と言い出した。
すると、Nさんは、カンカンになって怒り出し、
「そんなん 本人ぬきに会社が親や家族に電話とるのに違いない」
「第1組合に居たら、会社首になるいうとおるみ決まってる。」
と言っていたことと逆なことを言い出したので、みんながびっくり。
黙り込んでさびしい顔で、Eさんの手話をみる
Eさんは、ますます泣き出さんばかりの顔になり、
「ロックアウトでは、みんな仕事が出来なくなり、会社が勝つだろう。」
「私は早く仕事がしたくてたまらない」
「第1組合は、若い人ばかり。第二組合は世帯者が多い」
「私も家族を抱えている…… 」
みんな黙り込んでさびしい顔で、Eさんの手話をみた。
でも だれひとりEさんを責める人はいなかった。
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