Once upon a time 1969
初夏を迎えた京都。
Dさんとろうあ者代表4人、そして手話通訳者が集まり「守る会の結成」についての話し合いがもたれた。
3つの守る会の基本
Dさんのことだけではなく、働く人々すべてのことを考えてみよう。
第1組合のDさんを守ることだけ考えるのではなく、第二組合に行ったろうあ者2人のことを含め て考えよう。
ろうあ者が、働くことでもつ困難な問題を広く働く人々全体に知ってもらおう。
このようなことが、すんなりまとまった。
そして、この3つのことを守る会の基本にすえて取り組みを進めようと言うことになった。
この気持ちと方向を何よりも心を砕いてくれていた第1組合の人に伝えておかなければ、たとえ反対されても、と言うことになった。
少しうろたえながら ろうあ協会代表は
第1組合の全員集会。
ろうあ協会代表は、おそるおそる手話で3つの基本方向を話をした。
第二組合のことを考えるなんて……という反対意見や罵声が飛ぶかもしてないと考えて……
手話通訳者は、ろうあ協会代表の少しうろたえながらの話通り手話通訳した。息遣いもふくめて……
重要な時だった。
と、突然、第1組合の人々が全員拍手をしつづけた。
そして、感激してDさんに飛びついてくる人もいた。
鳴り響く拍手の中での仲間から飛び交う声援
「Dさん。今まで同じ職場で、同じ仕事をして働いていて、どれだけDさんと話したかったことか。」
「話合いたかったんや……」
「あなたの気持ちが、今、初めてわかった。ごめんなぁ」
「苦しくても、苦しくても、がんばろうなぁ」
鳴り響く拍手の中での仲間からの声援。
Dさんも感極まるばかりだった。
第二組合のろうあ者のことも考えてと言う話に反対するする人は誰もいず、みんなうなずき、「そうだ」「そのとうり」「そうしようなぁ」の声援が飛び交った。
ろうあ協会の話を真剣に聞いてくれた
第1組合は新しい方向を打ち出したが
その後、ろうあ協会の話を真剣に聞いてくれた第1組合の人々は、たしかに第二組合に走った人々の気持ちを充分考え切れていなかったとそれまでの方向を大きく変えていくことになったことをあとで知った。
でも、第1組合からの脱退者は次から次へと続き、Dさんと一番親しかった第1組合の役員まで第二組合に入るまでになった。
「あの人たちまでが、第1組合を辞めるならDさんも辞めても仕方がないなぁ」
と言う話がDさんに伝わり、感激に浸っていたDさんをどん底に陥れた。
「働くろうあ者を守る会」の結成
守る会結成準備会は緊急の集まりを開いて、
1,たとえDさんがもう一度第二組合に入ってもみんなの期待を裏切ったと言うことではない。
2,DさんもみんなもA鉄工所で働きたいという気持ちは一緒なのだ。
3,第1組合、第二組合にろうあ者がいたとしても、守る会を結成することは何らかわらない。
ことを確認した。
Dさんは、それでもすまなそうにしながら第二組合に入った。
1969年7月12日。
0 件のコメント:
コメントを投稿