2011年9月3日土曜日

新校長が金庫をあけたら、 公務災害申請書がいっぱい詰まって放置されていた     教師は、認定されないのですか、と何度も聞いたのに


山城貞治(みなさんへの通信75)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その55)


公務災害認定までの長い月日は、あまりにも多くのものを奪う

 京都府高は、障害児学校の教職員の二つの公務災害認定裁判に取り組み、二つとも勝利判決を得た。
 だが、小谷健康裁判は、1985(昭和60)年5月7日に、頸肩腕障害として公務災害認定を請求し、1991年(平成3)年8月14日付けで公務外認定処分。同年9月4日に本人に通知。

 裁判をして、京都地裁判決(1999[平成11]年7月9日)で認定されるまで約14年の月日がかかった。
 また西垣腰痛裁判は、1986(昭和61)年9月22日付けで、背腰痛症は公務に起因するとして公務災害認定請求をし、1991(平成3年)11月5日付けで右疾病を公務外と認定処分。同年11月24日に通知。

 裁判をして、京都地裁判決(1999[平成11]年12月8日)で認定されるまで、約13年の月日がかかった。
 これらの長い月日は、公務災害認定という被災者を救済する趣旨にも大きく反していることは繰り返し述べてきた。
 また同様なことが今だ各地で起きている。
 そこで、参考のため小谷さんの公務災害認定をめぐる問題が参議院地方行政委員会で取り上げられた会議録の一部を紹介する。長くなるが、現在も採り上げられた問題が基本的に改善されていないように思う。


第107回国会参議院地方行政委員会会議録1986 (昭和61) 年11月26日 (水曜日) より一部掲載 

1984(昭和59年)度では、腰痛は寮母が21.9%、 教員が16.2%、 頸肩腕症候群は寮母が10.5%、 教員が4.8%

○神谷信之助君 (参議院議員)
 まず、 文部省にお聞きをしたいんですが、 養護学校の教職員の疾病異常の率、 これは文部省調査をなさっておられるんで、 それを見ましても非常に高いんです。 それで、 その中でも滋賀県の場合は特に高いのではないかと思うんですが、 腰痛それから頸肩腕症候群、 これについて全国平均と比較してどうなっているか、 まず報告をしてもらいたいと思います。

○説明員(下宮進君・文部省体育局学校保健課長)
 お答えいたします。 昨年7月に文部省では、 養護学校教職員の腰痛、 頸肩腕症候群等の実態について都道府県教育委員会を通じて調査を行ったところでございます。 その結果によりますと、 昭和59年度における疾病異常の割合は全国では、 腰痛は寮母が21.9%、 教員が16.2%、 頸肩腕症候群は寮母が10.5%、 教員が4.8%であります。
 また滋賀県につきましては、 腰痛は寮母が71.0%、 教員が38.6%、 頸肩腕症候群は寮母が19.4%、 教員が7.7%でございました。


腰痛検診で85.3%以上もあるのに公務災害認定がない

○神谷信之助君
 これを滋賀県の八幡養護学校で見てみますと、 昭和60年6月の腰痛検診結果では、 検診を受けた者75名中異常ありとされた者が64名、 85.3%、 それから精密検査を要する者というのが23名であります。
 60年度に腰痛それから頸肩腕症候群、 妊娠異常、 これによる特休者は19名に及んでいるわけです。
 こうした状況にもかかわらず、 公務災害の認定は一体どうなっているのか。 非災害性の腰痛等の公務上の認定はまだ一件もないというように聞いているんですが、 これはそのとおりでしょうか、 お伺いしたいと思います。

○参考人(柳澤長治君・地方公務員災害補償基金理事長)
 お答えいたします。 非災害性の腰痛についての認定はございます。

○神谷信之助君
 いや、 八幡養護学校。

○参考人(柳澤長治君)
 滋賀県ではございません。


20名が公務災害申請をしたのに
 ナゼ 校長 県教委で止まっているのか

○神谷信之助君
 認定された者はないんですよ。 それで聞いてみますと大変な状況なんですね。 実情はどうかといいますと、 八幡養護学校で14名、 北大津養護学校で6名が申請をしたんです。
 早い人は昭和59年の11月、 遅い人はことしの8月。 ところがこの八幡養護学校の分は、 6人が県の教育委員会に、 それから8人は校長のところでとまっているんですよ。 だから、 支部まで行ってない。
 本人は出したけれども行がたい。 北大津養護学校では今年度に入って新校長が金庫をあけたら、 その書類がいっぱい詰まってその中に入っておった。
 金庫の中に詰まっておる。 支部に届かぬのですよね。 こういう状況がある。
 当時その前の校長には、 まだですかと何遍も聞いたけれども、 基金より何も言ってこぬと言うてそのままになって、 金庫に保管されたままになっています。 基金支部に申請書が出される前に、

早い人ではもう既に2年を経過しているという状況がわかりました。

放置された公務災害申請によって
 賃金ダウンや病気再発などなどが続いて

 この人たちはそうなるとどうなるかというと、 特休をとりますわね。
  しかし、 6ヵ月間は20%賃金ダウンだし、 その次の6ヵ月間はさらに20%ダウンされますね。 治療費は自分持ちだし、 そのために無理して勤務したらどうなるか、 また再発ですわね、 こういう状態が続いているんです。
 こういう状態は私は放置されてはならぬと思うんで、 果たして滋賀県だけの状況であるのか、 .あるいは全国的にそういう状況があるのかよくわかりませんが、 問題は、 そうなる原因は一体、 どこにあるのかという問題なんですよ。
 基金が求めている手続が複雑煩瑣なのか、 あるいは教育委員会とか学校当局が災害補償の実務に欠けているのか、 どうしたらこれは改善できるのか、 これが問題だと思うんですが、 この点について自治省、 文部省、 それぞれお答えをいただきたいと思います。 校長のところにとまったり、 教育委員会にとまったりしておりますからね。


公務災害補償の迅速な実施が出来ないのは
 本人に責任が と自治省・文部省

○政府委員(柳克樹君・自治省行政局公務員部長)
 手続の問題といたしまして、 公務災害の認定請求の際に所属長の証明を受けた請求書、 それから任命権者を通じた認定に必要な資料を添付の上基金に提出するということになっておりまして、 これは結局、 任命権者等の、 あるいは所属長の意見を十分反映して、 公務災害の認定を円滑に行いたいということであろうかと存じますが、 一般論はそれといたしまして、 御質問の件につきまして所属部局で書類がとどまっている。
 そういう不必要に長く時間がかかっているということでございますれば、 補償の迅速な実施という法の趣旨に沿いませんという問題でございまして、 大変遺憾なことでございます。 実情を調べるように指示をいたしまして、 適切な措置を講じなければいけないと存じます。

○説明員(奥田與志清君・文部省教育助成局地方課長)
 お答えを申し上げます。
 滋賀県の方に照会をいたしましたところ、 本件の場合におきましては、 先ほど公務員部長さんおっしゃっていただきましたように、 本人におきまして用意すべき書類がございます。
 そういうものを用意していただくように再三にわたって督促をしているというふうな状況でございまして、 教育委員会も校長も、 この制度の趣旨に沿ってできるだけ速やかに手続を進めたいというふうなことでございます。

階段をはって歩かなきゃならい痛みのある教師に次から次へと書類の追加を言い、放置したまま
○神谷信之助君
 本人に書類の不備を言って指導したけれども、 出てこないからおくれたということでしょう。
 実際はどうかというと、 例えばある先生がここに実情報告をしているんですが、 この先生は54年の4月に臨時講師として養護学校の高等部に勤務して、 もう1人の女の先生と2人でストレッチャーで移動するという重度の生徒を、 これを食事やトイレの介助をするという仕事をやっておった。
 7月ごろになって腰痛が起こり出した、 これは54年ですね。 56年度に正式採用になって、 ちょうど妊娠をして育児休暇に入りました。 育児休暇で休んでいる間は腰の痛みはいつの間にか忘れるようた状況になった。
 勤務をいたしまして58年度に今度は小学部の低学年に変わった。
 抱きかかえる子供が多くなったんですね。 それに伴って再び腰痛があらわれてくる。 前屈姿勢で大変痛みを感ずるようになって、 座った姿勢でも痛みを感ずる。
 それで家でだんだん仕事ができない状態になって、 3月ごろにはもう子供のトイレ介助のときの姿勢で激痛を感ずる、 子供を落としそうになったこともしばしばある。 そして、 車の運転中も痛みを感じ、 しんどい状況が起こる。 59年にクラス編成がえがあって、 今度、 また抱きかかえの子供ばかりのクラスになるんですよ。
 そして、 7月ごろからは運転中に激痛を感ずるようになって、 学校まで運転ができるかどうか、 そういう不安を感ずることがしばしばである。
 学校での勤務中は気持ちも張っているし、 痛さはあるものの何とかやっていける。
 けれども夜になると大変痛みを感ずる、 階段をはって歩かなきゃならぬ、 自分の子供も抱いてやることができないようになっている。
 そういう状況が起こり出して、 そして医者に行ったら、 専門医に特休をとりなさいと言われて、 59年の11月から61年の1月まで特別休暇及び普通の休暇、 これをやって治療に当たった。
 そして戻ってきているんですけれども、 60年の3月に申請用紙を学校長に出した。
 ところが、 同じ職場の別の先生の申請がまだ通ってないこともあって、 ずっと60年の9月まで半年間校長の手元にあった。 それから9月から11月にかけて校医検診とか専門医の検診の結果、特休者が先ほど言いましたように続出をいたしました。
 そういう状況があって、 みんながどんどん申請をするようになりました。
 このときに腰痛に至る経過説明をせよという指示があった。
 それでクラスの実態等を含む資料と経過説明を出した。 その後全校児童生徒それぞれの体重とその平均値を出せ、 こういう指示が出た。 校長からクラスの実態を書けと指示があった。
 以前提出した資料にもクラスの実態を書いているので、 書き直せということかと言うと、 そうだと言ったけれども、 しかし、 前に出した書類は返してもらえない、 こう言っています。


民間のびわこ学園の労災認定と比べても
   あまりにもおそい公務災害認定

 だから、 本当に何といいますか、 てきぱきと処理を迅速にしてやる、 そういう援助をしてやるという状況ではないんですね。 こういう.のが実態の姿なんですよ。
 そこでお聞きをしたいんですけれども、 同じ滋賀県に民間のびわこ学園という養護施設があります。 同じような症状でここでは申請をすれば労災の認定が大体2, 3カ月でおりてくるんです。
 だから、 一般の民間の労働者、 そっちの方では同じ養護学校、 養護施設で2、 3カ月でどんどん労災の認定がおりる。


「教育と労働安全衛生と福祉の事実」は、ブログを変更しましたが、連続掲載されています。以前のブログをご覧になりたい方は、以下にアクセスしてください。

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