「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その61)
府人事委員会の情報開示のことについて、述べてきたが、京都府高アドバイザーの辻村一郎先生(当時同志社大学教授)は、すでにこれらのことを指摘していた。
以下、大阪職対連機関誌「労働と健康」(1999年7月)に掲載された文章を紹介したい。
教職員のいのちと健康を守る攻勢的運動
今から30年前に私のゼミ生が卒業論文に 「教職員の労働条件と健康問題」をとりあげ当時の京都教職員組合で聞き取り資料収集をし、論文にまとめたことがあった。
私も関心をもっていたのでその後も健康調査結果や母性保護などに関する権利を獲得したと聞けば資料の依頼をした。
1980年代前半に勝俣咲史他「教師の自殺」(注:勝俣瞑史・佐々木保行・丸谷真智子・大坪功「教師の自殺」有斐閣新書1983/6)を読んで教職員の精神疾患と自殺の深刻な状態に驚いたこともあった。
このような教職員組合の健康を守る運動や研究はあったが、労働安全衛生の立場で運動がすすむようになったのは約10年前からである。
労働安全衛生(法)とは何か、安全衛生管理体制、なかでも健康診断や安全衛生委員会に関心が傾きながらいのちと健康を守る意義や課題について、学習会及び健康調査などが盛んにおこなわれた。
他方、教育委員会は労働安全衛生管理に関する規則・規定などを作成してきた。
その地域の教職員組合の十分な検討を待たずに規則を作成し導入したところや教職員組合の修正要求があったにもかかわらず、それには応じることなく強引に導入したところ、教職員組合の要求にそった内容で実現したところ、あるいは教職員組合の道理ある要求が安全衛生法を下まわる規定案をねばり強く阻止しているところもある。
前二者は労働安全衛生法に抵触するようなものであり、引きつづき改善要求がなされているはずである。
労働安全衛生の第ニラウンドがはじまっている
昨年11月、辻村と川上雅詮編「学校がよみがえる労働安で峠田助教授(滋賀医科大学)は、「教職員の労働安全衛生」 は1990年からはじまったこと。
そして学校保健法と労働安全衛生法の『運用』をまちがったか、あるいは『無視』していた文部省が労働安全衛生の理解不足だったといい方針を転換したこと。
そして第一ラウンドは教職員の労働安全衛生では前進し、つづいて第ニラウンドは、今、はじまっている、と述べている。
今度は、
「どのような労働安全衛生をどれだけ実効性のあるものとして生かしていくか」
(78頁)であり
「学校数育と先生たちの安全や健康をどのように両立させていくか」
が課題であると提起している。
そして貴重な提言をいくつかしている。私も同感である。
それをも踏まえてこの小論では私なりの提言をしたい。
教職員・教職員組合は教育委員会の
その施策の枠内に即応した運動になりがちだった
(1) 職場に労働安全衛生法を運用するための規則(安全衛生管理規定とか安全衛生管理要項など)を教育委員会が作成し強引に決めてしまうやり方には大いに問題がある。
それも、労働安全衛生法の基準以下のものである。
また、労働安全衛生法全体を安全衛生管理体制に矯小化したかのようなものになっていることも見逃せない。
ところで、ここで指摘したいことは運動側の問題である。
教職員・教職員組合は教育委員会のその施策の枠内に即応した運動になりがちだったことである。
つまり、労働安全衛生管理体制に目がむきがちで、肝心の職場における日常的な安全衛生活動(労働条件・教育条件・労働環境の改善、安全で健康で快適職場の要求運動)が進めにくかったことである。
健康で安全で快適に教育できるように学校をかえる責任が
事業者にあることを明確に出来ていなかった
その理由の一つは、教職員が健康で安全で快適に教育できるように学校をかえる責任が事業者にあることを明確に出来きなかったことである。
労働安全衛生法の目的(第1章第1条)は、労働基準法と相まって労災防止のための危害防止基準を確立し、責任体制の明確化及び自主的活動促進など総合的な対策を推進することによって労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境形成を促進すること、とある。
そしてこの目的遂行のために事業者は法の最低基準を守るだけでなく快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通して労働者の安全と健康を確保するようにしなければならないことを事業者に義務づけている(第3条)。
知事、市長、教育委員会は、教職員を採用・雇用した瞬間にこの責任が生じているのである。
労働安全衛生管理体制はいいかえれば労働安全衛生管理責任体制である。
被害の事実を踏まえた権利意識の
あいまいさと結びつく責任追及
この点の職場からの責任追及が不足している。
責任追及が弱いということは被害の事実を踏まえた権利意識のあいまいさと結びつくものであり、また、いのちや健康の社会的な大切さの自覚の不十分さに関係する。
この点に関してはひとり教職員だけの問題ではない。
さらに、教育という職域の特性がこのことをより困難にしていることは事実で、あとで述べるが、この面の調査・研究はこれからの課題だろう。
しかし、自覚的な教職員・教職員組合のこの10 年の安全衛生闘争や過労死、けいわんなどの認定・補償闘争のなかでは事業者責任を追及する方向性が部分的にみえてきたことも事実である。
「立入調査」結果が教職員に知らされているかどうか
直ちに法違反が是正されているかどうか
(2)人事委員会に目をむけた運動をすすめることが必要である。
労働基準監督署や人事委員会(公務員)は労働者(教職員)を保護する労働基準法や労働安全衛生法が実施されているかどうかを監督し法違反があれば是正させる行政機関である。
労働基準監督署や人事委員会は必要があると認めたときに立ち入り調査をおこなうだけでなく労働者の申告(権)にもとづいて立ち入り調査も行う(なお、京都では、養護学校の寄宿舎・給食の職員は労働基準監督署の管轄下に入る)。
問題は人事委員会によって、すでに行われて いるはずの「立入調査」結果が教育委員会に報告され、教職員に知らされているかどうかである。
さらには直ちに法違反が是正されているかどうかである。
京都府立高等学校教職員組合は「立入調査」を府教育委員会によって公表させるところまで前進している。
「教育と労働安全衛生と福祉の事実」は、ブログを変更しましたが、連続掲載されています。以前のブログをご覧になりたい方は、以下にアクセスしてください。
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