山城貞治(みなさんへの通信77)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その57)
(28)障害児学校に、安全で衛生的で働きやすい環境をつくること。
机・椅子・ベッド・便器などを教職員の作業姿勢を考えて調節可能なものにするとともに、あらゆる設備の安全・衛生点検を行いその改善を進めること。
また、リフターやリフト付きスクールバスをはじめ先進諸国で導入されているオーダーメイドの人間工学にもとづく機器の導入をはかり、教職員の健康を守るなどの予防策を講じること。
この項目については、1970年代に北欧で医療職等で「腰痛が多発」した時、機械導入による介助などの方法で「腰痛」が激減したことを調べて、障害児学校での導入検討をという意味で政策化したが、子どもたちを「抱きかかえる」ことが教育で、機械導入では人間と人間のふれあいがなくなるという意見が障害児学校の教師から強く出された。
この時の論議は、子どもとのふれあいで教師が腰痛・頸肩腕障害になるならそれは、教師が健康を破壊してこそ教育であるということになりかねない。
教師の身体的負担を減らすことで、もっと教育内容が進むのではないか。
北欧では、さまざまな機器が開発され、それが導入されれば今でも教師の身体への負担をなくすことが出来る。
などの意見を出したが、一部の教師はそれは「教育を放棄することになる。」と言って激しい反対意見が出された。
そこで、エルゴノミックス ( Ergonomics・Human factors・日本語でいう「人間工学」)の推進を説明したが、受け入れられなかった。
しかし、現実には、障害児教育の分野では、古くからエルゴノミックスが導入されていた。
近年日本でも、ノーリフトやノータッチという考えが広がっている。
しかし、政策「労働安全衛生対策について」そこまで踏み込めなかった。
「知っていますか?労働安全衛生法」
という教職員組合ほど労働安全衛生法すら見ていない
最近、教職員組合の一部でこのようなことが宣伝されている。
「知っていますか?労働安全衛生法」として、
長時間・過密労働が健康を破壊します
「1日24時間のうち、 3分の1の8時間の労働が、健康上も人間らしい生活を送るためにも不可欠です。8時間以上の労働を毎日続け、しかもその労働の質が過密なもので、強度のストレスにさらされるものであるほど、健康破壊が進みます。」
「教職員(労働者)の1日は、24時間です。でも24時間オープンしているコンビニとは違います。8時間労働して、8時間睡眠して、あとの8時間は食事や洗面や入浴、そして家族のためやプライベートのために費やす時間です。」
などなど、長時間過密労働労働は、労働安全衛生法で防ぐことが出来たり、健康を守ることが出来るという主張である。
府高労働安全衛生対策委員会では、当初このような意見があった。しかし、労働基準法と労働安全衛生法を混同していると指摘して来た。
事実、先に挙げた「知っていますか?労働安全衛生法」と主張する教職員組合の役員は自分自身で労働安全衛生法を読んでいないことが解る。
1日8時間労働は、労働基準法で定められていることも知らないのである。
非常に残念なことにこういうことが未だ横行している。
では、労働安全衛生体制を強調する部分では、
「衛生委員会(労働者側選出の委員と、使用者側委員と同数の委員によって構成。」(注:労働安全衛生法では、使用者ではなく事業者)
とも説明している。
だが、これは労働安全衛生法を読んでいるのか、読めていないのかと不思議に思う。
議長は、事業者側で、衛生委員は事業者側と労働者側同数であるから、衛生委員会は事業者側が多くなるのが労働安全衛生法に基づく最低基準である。
もちろん、民間では労働協約に基づいて議長を順番制にしたり、労働者側委員を多くしているところもある。
だが、地方公務員の教職員の多くは、このことが出来ないでいるばかりか、校長が事業者とする衛生委員会では、校長が議長となりしばしば不都合な事態が起きると衛生委員会が開かれないという問題がしばしば生じている。
労働安全衛生法は万能であるかのような幻想を今だ振りまいている教職員組合がある。
なにが法で、学校がどんなことをしているのかも知らない
府教委と労働安全衛生協議
さて、「労働安全衛生体制の確立は教職員のいのちと健康を守る」「労働安全衛生法を教職員に適用を」という京都府高の上部団体である全日本教職員組合(全教)が言い出したとき、「労働安全衛生法はもともと教職員に適用されているのに何を言っているのだろうか。」と思った。
しかし、そのこといくら説明しても「適用されていません。」の返事しかかえって来なかった。
今も労働安全衛生体制があれば、と思っている教職員組合は多いらしい。
府教委と府高との第1回労働安全衛生協議は、1998年5月12日からはじまったが、それ以前から私たちは府教委の対応に非常に疑問も持ったし、また府人事委員会との会談でも多くの疑問を抱いた。
そのため府人事委員会が、労働基準法・労働安全衛生法・船員法に基づく法違反がないか、どうか、の監督権をどのように「行使」しているのかを徹底的に調べた。
府人事委員会が、それらの資料を情報開示していることはすでに述べてきた。
しかし、その全容を解明するには少なくない「知識」を必要とした。
私、山城貞治はまず労働基準法とその関連法規・通達・通知など調べた上で、労働安全衛生法を徹底的に読もうとした。
労働安全衛生法は120条を超え、労働安全衛生法施行令・労働安全衛生規則及び労働全書・安衛法便覧、各種事例などすべて「目を通した」。
読みこなせたものではないが、ともかく読んでおこうという意気込みだけで読んだが膨大な量で毎日深夜まで「目を通した」。
後で労働法関係を専門にする弁護士から「あんなの読んでられないよ。弁護士でもほとんど読みこなせている人はほとんど…」と言われた。
「なんだ、そうなのか。」と思う反面、労働安全衛生体制の確立は教職員のいのちと健康を守ると主張する人々の「いい加減さ」に驚いた。
労働安全衛生法を読んで、これはいのちと健康を守れる、と読めるだろうか。
だだ、のちのち、生徒や卒業生の労災・職業病や安全対策の相談にはとても役に立った。
だが、私は、とてもじゃないがこの法律で、いのちと健康を守れる、とは言い切れないと思った。また問題があまりにも多い法律だと思ったのが率直な感想である。
だから、府教委と府高との第1回労働安全衛生協議で府教委が「法によれば…」と言うとすかさず「それは法ではなく、労働安全衛生規則じゃないのか」と言うことが出来たが、府教委は、労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令・労働安全衛生規則、労働省通達まで「法律」と「まとめて」言うのには驚いた。
そればかりか、彼らの言う「法律」に書かれていることが解らなくて「曲解」しているので、しばしば「解説」しなければならなかった。
本来教育行政は、法に基づき教育行政の仕事を行っているのに「法」を読めてないのである。
これらのことは、山ほどあるが、私が一番驚かされたのが「次回の労働安全衛生協議は3月1日午前中」と言った時だった。
「本当に3月1日」「そうです。」「その日は府高(教職員側)とてして、全員でられない日です。」「何でなんですか。」「卒業式の日でしょう。」「ああそうですか。」
こんな会話は考えられなかった。その当時、府立学校は一斉に3月1日が卒業式だったが、府教委側はその日すら考えていなかった。
卒業式や入学式のあり方にあれこれ言うのに、卒業式がある日すら頭にないのには驚き以上の衝撃を受けた。
学校のことを知らなさすぎる、と。
怒りと虚偽の連続からはじまった
府人事委員会資料の情報開示が
この前後から、このままでは前進みしないとかんがえていた時、西垣腰痛裁判が1999(平成11)年12月8日に勝利をした。西垣さんから、支払われた費用を労働安全衛生のために使ってほしいとの申し出があった。
でも、その費用は西垣さんが被害を被った費用で積み上げ補償はされていない。それを使うことは出来ない、と全員でお断りしたが。だが、ぜひ、という返事があった。
そこで、「申し訳ないけど少しカンパという形でお願いしたいことがある。府人事委員会の労働基準法・労働安全衛生法・船員法に基づく違法を調査した全資料を情報開示でとって、それをデーターベース化して全校に配りたい。その費用を出してくれないか。」と打診したら、即快諾の連絡があった。
今なら簡単にデーターベース化出来るが、当時難しく、業者と話をして費用を見積もった上で府人事委員会に府立学校全校に関する「労働基準法・労働安全衛生法・船員法に基づく調査した全資料」を個人で申し入れた。
府情報開示の担当者から「資料の保存は10年で、それ以前は処分しています。膨大になるので、開示が出来るまでかなりの時間がかかるけれどよろしいですか。」と連絡があり、数ヶ月して「開示」資料がそろったので取りに来るようにとの連絡があった。
年休がとれる日を言って、府庁に行ったが、怒りと虚偽の連続が待ち受けていた。
「教育と労働安全衛生と福祉の事実」は、ブログを変更しましたが、連続掲載されています。以前のブログをご覧になりたい方は、以下にアクセスしてください。
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