2011年9月2日金曜日

ILO 先進国で問題になってきている教員の校内での暴力、ストレス、バーンアウトは非常に重要、重大関心を持っている



山城貞治(みなさんへの通信74)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その54)

「ILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告」
には教員の健康問題に関する内容が不十分だと意見

京都府高の代表として、

・「ILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告」には教員の健康問題に関する内容が不十分だと思うが、現時点でのILOの認識はどうか
・「勧告」にある「課外活動」の定義はどのようなものか
の2点に絞って質問した。

これに対して 
・課外活動については特に定義はなくそれぞれの国によってあり方が違う
。クラブや識字活動、その他の社会的活動に教員が参加すべきだとしている。
・教員の健康問題については大きな関心を持っている。
 非常に重要な問題であり、その重要性は増している。
 特に先進国で問題になってきている、校内の暴力、ストレス、バーンアウトなど。
 ILOとしてもこの問題についてのプログラムを始めようとしたが予算の関係でできなかった。
 従って2002年までは何も出ない。しかし、今回のような持ってこられたレポートをたくさん出してもらうことで、必ず反映されるから、おおいにレポートを出してほしい。
という答えだった。

クラブ゙活動を強制され、しかもサービス勤務のような位置づけ
   では本来の社会参加とは言えない

 課外活動については教員の社会的位置を考えると、社会活動に参加していくのは当然だと思うが、日本のようにクラブ゙活動を強制され、しかもサービス勤務のような位置づけでは本来の社会参加とは言えないのではなかろうか。
 そう思いつつ「教員の地位に関する勧告」の他の項目をみると

「教員の課外活動への参加は、過重な負担となるべきではなく、かつ、教員の主たる職務の遂行を妨げるべきではない。」
「学校での授業に加えて、特別の教育的責任を課せられる教員は、これに応じて通常の授業時間を短縮されるべきである」

としっかり書いてあった。
 これを示して府教委に尋ねたらどう答えるのだろう。
  健康問題については、貴重な発言を引き出せたと思う。
 ILOとしての認識は「重大な関心」を持ち「非常に重要」と考えているということだ。2002年には何らかの見解が出るだろう。
 その時、今回の京都や東京(都障教組)のレポート、小谷・西垣裁判や内藤裁判の判決が反映されるに違いない。
 ラットリーさんとの懇談の最後に田中さんが裁判資料を渡し、西垣さんも握手した。
 ラットリーさんは西垣さんの腰の具合はどうですかと気遣ってくれた。
 われわれはその何気ない心遣いにおおいに感激したのである。
 さすが、ILO!この日午後からは岡山から人勧値切り問題についての申し立てが論議された。
 
ILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告は
病気を治して正常な状態に戻すために
  医者が使う道具のようなもの

 パリにあるユネスコ本部(UNESCO・United Nations Educational, Scientific and Cultural )を訪れたのは28日。
 こちらはILOに比べると規模が小さかった。
 牛久保さんもユネスコとの接触は初めてということで、いろいろコンタクトを追及した後、文部省の中にあるユネスコ国内委員会を通じて会談が実現したそうである。
 ユネスコ教員政策担当のリチャード・ハープランさんが対応してくれた。

 この人はILOのラットリーさんに比べて少し神経質そうな感じがした。しかし、そう見えたのはわたしたちの素性がわからなかったので、慎重になっていたせいかもしれない。
 ハープランさんは
「ILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告は全ての国で受け入れるべきものとして政府間会議で決議されている。
 勧告が守られている状況がノーマルということである。勧告は病気を治して正常な状態に戻すために医者が使う道具のようなものである」と説明してくれた。
 そして、「教員がその国の教育改革に参加すべき」であり、勤務評定についても「不当と思われる評価がなされた場合には不服を申し立てる権利を持たなければならない」と勧告の内容にそって話してくれた。
 この話を通じて、教員の専門性ということがずいぶん強調されていた。
 我々は教育の専門家であり、だからこそ自由が確保されなければならないということを改めて認識する機会になった。

平和と非暴力のための6項目の署名

 午後は平和文化プログラムの責任者デビッド・アダムスさんと懇談した。ユネスコは「平和と非暴力のために マニュフェスト2000」の国際署名を呼びかけている。
・全ての生命を尊敬します
・暴力を拒絶します
・他の人々と分かち合います
・聞いて理解します
・地球を守ります
・連帯を再発見します
という項目に署名し、平和と非暴力の運動を広げていこうというユネスコの運動に地球的規模の視点を感じた。
 この運動における教員、学校の役割が大切と訴えるアダムスさんの情熱を感じ、京都でも運動を広げたいと思った。

ILO・UNESCOに共通する基本テーマは平和

 あっという間の一週間だった。ジュネーブ・パリという国際都市、ILO・ユネスコという国際機関に初めて足を踏み入れ、学ぶところは多かった。
 私たちは「視野を大きく(川田龍平君の好きな言葉)」持ち、京都や日本の運動を発展させると共に、海外の同じ課題を持つ人々との連帯をさらに広げていかなければならないと感じた。
 そして、この二つの国際機構に共通する基本的なテーマ「平和」の大切さを改めてかみしめている。
 最後にレポートの英訳にご尽力いただいた美山分校のS先生、鴨沂高校のO先生にお礼を申し上げ拙い報告を終わる。




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