2011年9月3日土曜日

公務により災害を受けた労働者を正当に救済するものでなくてはならない公務災害認定が 中央の判断待ちとは

山城貞治(みなさんへの通信76)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その56)
 
第107回国会参議院地方行政委員会会議録1986 (昭和61) 年11月26日 (水曜日)より一部掲載
 
労働災害と公務災害との補償手続き・制度の違いがあるのか
 
 公務員の方は、書類が不備だとか何じゃかんじゃ言って出てこない。労災と地方公務員の災害補償に認定基準に差違があるのか、 違いがあるのかといろいろ聞いてみましたが、 違いはないという説明を受けています。
 事実、労働省の基準局長の認定基準に関する通達及び補償課長の運用上の留意点についての説明書と、地公災の基金理事長通達による認定基準及び基金補償課長の支部事務長あての説明文書の内容はさした違いではないんですが、この辺は一体こういう養護学校なんかの腰痛、 頸肩腕症候群の認定についてはどういう状況になっているんでしょうか、基金の方にお願いしたいと思います。

労災、 国公災、 地公災大体同じ認定基準でやっていると言うが
 
○参考人(柳澤良治君)
 認定基準の問題でございますが、今御指摘のございましたように、労災、国公災、地公災大体同じ認定基準でやっております。
 先生も御存じのとおり、大体公務災害認定の処理状況は2カ月以内に98%までは処理されております。ただ、 残りの2%にいろいろ問題があるわけでございます。
 病状が非常に複雑であるとか、あるいは関連の資料を収集しなきゃならぬというふうな関係でおくれておるのではなかろうかと思いますが、いずれにしましても職員にとっては非常に大事な問題でございますので、この前の委員会でも先生から御指摘されまして、昨年の9月に支部に通達を出しまして、 認定業務を迅速にやれというふうな通達を出して、 基金としても今後努力してまいりたいと思っております。
○神谷信之助君
 私は地方公務員の災害補償の場合、今もおっしゃったんだげれども、いろんな資料出せとおっしゃるんだが、これから後でその問題も取り上げますが、問題は安易な災害主義ではなしに、 非災害性のそういう疾病ですね、これには何といいますか基本的に、やっぱり労働者に対する負担過重蓄積といいますか、 疲労の蓄積といいますか、こういったものの判断を避けているのではないだろうかという気がしてならぬのですよ。
 
頸腕症、背痛症発生の要因については所属長である
   校長が事実証明を出していても
 
 そこでお伺いしますが、 京都の南山城の養護学校の教諭の小谷美世子さん、この人が昭和60年の5月7日に支部に公務災害認定請求書を出しました。
 頸腕症、背痛症発生の要因については所属長である校長が事実証明を出しています。
 同じような職場ですから、「直接原因とした災害発生の事実としては」、昭和58年5月ごろに子供を、「二人で抱き上げようとしてよろけた時から右上腕部に徐々に痛みが出てくるようになった」ということですね。それから、 59年の2月にもう一人の子供を、二人で抱き上げベッドヘ移動中」 に今度は子供が、「急にからだをそらせた為抱き直した際右背から肩、首にかけて痛みが走った」、こういう事実を校長は確認しています。
 そしてそれが、現在の疾病と日々の教育活動との因果関係の有無については、医学専門家の範疇であると考えている。
  しかし、本人が全面介助を必要とする重症心身障害児の教育に4年間たずさわって来たこと、重症心身障害児の教育現場においては、指導者の頸、 頸腕、 背、 腰に継続して負担がかかっていることは事実である。
 肉体的負担がかかるのは、単に子どもの体重そのものの負荷のみでなく体の変形、拘縮、骨格・筋肉の弱さ、異常緊張や反射運動などにより、抱き上げる指導者の姿勢に無理が生じ、一層負荷がかかる実態にある。
 なお、精神的な緊張を持続しなげればならないことも見逃すことのできない事実である。という校長さんの事実認定に基づく意見書を出しておられます。
 
京都の養護学校でも
一例も公務災害認定がされていないのはナゼか

 ところが、これ現場の校長さんもそういうものをつけて出しておりながら、それが1年半経過をしている。まだ、いまだに結論は出ていないんです。まだ京都では、養護学校での非災害性の認定事例が1件もない。
 そこで、基金支部の方は中央へ問い合わせ中だと言うんですよ。
 これは参与の委員がそう言っているのです。
 そうしますと、基金の支部の方はこうした非災害性の判断に当たって、すべて中央と協議しなきゃならぬということになるのかどうか、この辺はどういうことなんでしょうか。
○参考人(柳澤長治君)
 非災害性の腰痛につきましては支部に一任されております。ただ、支部でどうしても判断困難であるという場合には、本部に協議していただいても差し支えないと、こういう形になっております。
 
公務災害基金支部の審査会としては認定をしたいと思っているんだけれども
 基金の中央に間い合わせたらなかなかうんと言ってくれぬ
 
○神谷信之助君
 そこのところが問題です。私もかつて京都支部の審査会の参与をやったことがあります。
 あれも2年余りたしかかかったと思いますよ。
 大体審査会の委員さんなんかは、これはその事件が終わってそして数年してからの話ですけれども、支部の審査会としては認定をしたいと思っているんだけれども、基金の中央に間い合わせたらなかなかうんと言ってくれぬと、それで長いこと暇がかかったよ。
 もうやいやいつつかれておうじょうしたという話をしてくれたことがあります。
 だから、 認定が非常に微妙だ、 あるいは困難だというからできない、その場合は中央へ相談をするということなのか。 学校長自身もそう言って事実を認めているわけですね。
 この辺はひとつもっとてきぱきとやれるようにする必要があるのではないのか。 こういう制度の趣旨を生かすこと、 迅速公正に行うこと、 この点から私は改善が必要だと思うし、認定基準のあり方、 その運用について見直す必要があるのじゃないかと思うのです。
 
公務災害の認定基準は
 公務により災害を受けた労働者を
 正当に救済するものでなくてはならない
 
 ちょうど私はここに、これは55年の6月に出た基金の京都支部の審査会の裁決書ですけれども、 城陽市の保母さんの同じような疾病です。
 頸腕症候群あるいは腰痛症の認定外に対して、これは認定外の決定を取り消して救済をしたわけです。
 その中にこういうのがあるんですね。「公務災害の認定基準のあり方」について判断を出しています。それは、公務災害の認定基準は、公務災害補償制度の目的と理念に見合って公務により災害を受けた労働者を正当に救済するものでなくてはならない。
 この場合、公務災害の認定のために必要な要件としては、公務関連性があれば足りるものである。
 たとえ、公務と疾病との間に相当因果関係が必要であるという説に立つとしても、この因果関係の内容は、労働者の生存権、労働基本権を保障するに値するものでなければならない。
 従ってこの因果関係の判断は、一般の不法行為における因果関係の判断より請求人にとって軽減された内容でなければならない。
 こういう判断を示している。私は、これは至当な判断だというふうに思うんですが、参考人はどういうようにお考えでしょうか。
○参考人(柳澤長治君)
  本部審査会でございますね、 今のあれは。
○神谷信之助君
  京都支部の審査会です。
○参考人(柳澤長治君)
 審査会は、私の方は認定機関でございますが、支部審査会は一応第三者機関でございまして、 客観的、 専門的な立場で公正な判断をされると思います。
 そういう点で、今私も初めてそのお話を伺ったわけでございますが、そういう御意見はできる限り尊重したげればならないと、 かように考えております。
 
公務災害の認定基準のあり方とは
 労働権、 生存権を保障する見地から
 
○神谷信之助君
 私は、公務災害の認定基準のあり方としては、いわゆる裁判、あるいは不法事件における因果関係ということではなしに、そういう判断が請求人にとって軽減される内容でないと、いわゆる労働権、 生存権を保障するという、そういう見地に立って検討される判断の基準の一つに入れなきゃならぬという意見については、 非常に大事な考え方ではないかというように思うんです。
 この問題についての最後にお伺いしたいのは、文部省にお願いしますが、今も言いましたように滋賀県だけではなしに京都養護学校の実態も非常に厳しいわけです。
 障害児を抱きかかえたり、いろいろな介護をしたりしなければいかぬわけですから、そういうために無理な体形をとるというのはしばしば起こるわけで、こういう職場の公務災害の未然防止、予防というのが非常に大事だというように思うんです。
 その点で、 関係者は
 


一つは職員の定数増、当面の重度加配の措置をしてもらいたい。
二つ目は、施設設備を子供の実態に合ったものに改善をしてもらいたい。
三つ目は健診の充実と発症の早期発見。

 こういったことが要望されているんですが、 こういった養護学校のような、 そういうとりわけ重度障害児を抱えているようなところでの労働条件あるいは環境の改善、これについての見解をお聞きしたいと思います。

教職員の健康管理が適切に行われるよう
 文部省として指導あるいは努力
 
○説明員(下宮進君・文部省体育局学校保健課長)
 お答えいたします。
 養護学校も含めました学校の教職員の健康管理につきましては、学校の設置者は、学校保健法の規定等に基づきまして毎年度定期にまたは臨時に健康診断を実施いたしまして、その結果に基づき治療の指示や勤務の軽減等の措置を講じているところでございます。
 また、このような措置とあわせまして、先生御指摘のような勤務環境の整備やあるいは養護学校の教職員の定数増につきましても改善に努めているところでございます。今後、こういった措置を充実いたしまして、教職員の健康管理が適切に行われますよう、文部省といたしましても指導あるいは努力してまいりたいというふうに考えております。
 ○神谷信之助君
 先ほど言った滋賀県の場合のように、校長が上から言われたら不備や不備やというようなことをやっているんじゃなしに、やっぱり片方山城の養護学校の方は、校長が意見書を出して勤務の特殊性も明らかにして、支部へちゃんと申請を出しているわけですから、そういう点は調査をして指導をぴちっとやってもらいたいということと、それから、私の家の近所にも養護学校があるんですが、確かに大変な状況なんで、こういった点についての教員の加配、重点加配とか施設の整備等、これはぜひお願いしておきたいと思います。


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