2011年8月30日火曜日

多くの人を自殺に追いやることで 「痛みを伴う改革」と言うのか 今は「連帯の時代」


労働・基本的人権・いのち」より川人博弁護士の講演の概要より

電通過労自殺はバブルの絶頂期だったが

長時間労働は景気に関係なく行われている日本・リストラされる労働者もリストラをすすめさせられる管理職もストレスは増大し続ける。
 「完全失業率と自殺率の推移」の資料を見ると、電通過労自殺の大島君が亡くなったのは91年で、バブルの絶頂期。


 その後、バブル崩壊などがあった。
 不況で、その後の自殺率はどうなったか。
 長時間労働はどうなったか。

 一部には不況で、労働時間が減った企業もあるが、一般的には、長時間労働は変わっていない。
 日本は経済動向に関係なく長時間労働。
 売れなければ売れるまで働く。
 自動車関係は今、月に休みは1日か2日。車を売るために多く働く、それで売り上げを上げようとしている。
 これが日本の企業の実態。
 しかし、労働の成果が思うように上がらず、ストレスになっている。
 バブルの頃は働いたらそれなりに成果があった。
 しかし、今は働いても働いても成果が見えにくい。
 それがストレスになっているし、リストラの不安もある。
 自殺率は人口10万人当たり何人自殺しているか。数年前世界で中位だったが、最近はトップクラスへ。それとほぼ同水準で失業率も。
 自殺で勤務問題が問題と警察庁が認めたもの、1980年は919件、それが1998年は1877件と倍加。

報道されない リストラ通告の翌日に、社寮の前で焼身自殺

 一昨年私は「過労自殺」という本を書いた。労働行政を改善させたいという思いから。この本を読んだ女性から手紙がきた。

 「22歳の会社員。父が自殺し、今は母・私・妹の3人暮らし。父が残した手紙を見ると、相当悩んでいた様子。父はリストラを言いつける仕事。リストラを言いつけた人が会社に文句を言い、採用した父が責任を取らされ配転」

 そこで、会って詳しい話を聞くと、父は、13人に退職勧告をせよと会社に言われ、勧告した。
 そのうち1人が父が採用した人。その父が、残した日記に「自宅近隣にビラをまくとの脅し。自分に対する処分は必至。ローンもあり今会社を辞めるわけにいかない」リストラ通告の翌日に、社寮の前で焼身自殺などの事案も。これは報道されていないが…。
                           

言えるのか 自殺の増加を「痛みを伴う改革」

 リストラで私が、言いたいかというと、リストラをされる側の相談ももちろん多いが、リストラする側の相談も相当数あるということ。

 リストラする側のストレスも相当なもの。ある企業の事案では、解雇ではなく、地方出向ではあったが、受け容れてくれず自殺した例もあった。

 マスコミ用語で言えば、「痛みを伴う改革」。

 リストラをされまいとする人たち、そして、リストラをする中間管理職的な人たち。
 こうした人たちの苦悩が自殺率の上昇につながっている。
 「痛みを伴う改革」という言葉を私は嫌いだ。

26時55分とか、25時16分とかいう表記でいいのか

 山一証券の課長の亡くなる直前の勤務状況。
 日本の大企業の倒産のはしり。その中で、課長が亡くなる。海外出張、帰国後、休みなく勤務。長女の学芸会の約束があったが、自宅で冷たくなっていた。
 このことで言いたいのは、彼のような徹夜労働などは、海外の経済と密接に関係しているということ。
 海外のマーケットが開いている時間は日本では深夜になるが、その時でも働かなければならない実態。
 26時55分とか、25時16分とかいう表記。
 3大女性誌の1つ「女性自身」の編集者で亡くなった24歳の青年の裁判でのタイムカード。

 なんと金曜日の出社は31時14分。
 週刊誌の編集者は夜の仕事が多いというのは想像できるが、31時14分=午前7時14分はひどい。これは記録として残っているからましかもしれないが…。

会社から見放されただけでなく
社会から見放されたという思いが中高年自殺

 企業の生き残りをかけて、市場競争至上主義が当たり前になっている。
 最近は勝ち組、負け組という言葉が流行しているが、競争の中での負け組にならないようにということが今ほど強調されている時代はない。

競争ではなく 連帯の時代

 私はこういう時代だからこそ、競争ではなく連帯を求めなければならないと思う。
 しかし、日本社会の全体の方向はそういう方向では進んでいない。
 失業保険にしても、失業が増えていて、失業期間も伸びているが、給付を減らす方向に。
 何十年働いても1年未満しか失業保険がもらえない。
 転職が容易な時代なら300日というのは長いと感じるかも知れないが、今のような時代は、300日はアッと言う間。今、給付金自体を減らす方向で議論が。

 一昨年、山田洋次の「学校Ⅲ」で職業訓練学校を舞台に中高年のリストラを描いたが、中高年はそうした学校に入りたくても入れない大変な状況。新しい技術がない中高年はミスマッチという。
 職業訓練学校の充実や、失業保険給付金の条件緩和などは急務。
 今は、高い金を払って転職のために準備しなければならないのが実態。
 公的に援助すべきだ。
 セーフティネットの強化が必要。職場の中での働きすぎは社会体制が大きく影響している。
 


 中高年の自殺の増加は、会社から見放されたというだけでなく、社会から見放されたという思いが強いのではないか。


「教育と労働安全衛生と福祉の事実」は、ブログを変更しましたが、連続掲載されています。以前のブログをご覧になりたい方は、以下にアクセスしてください。

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