2013年7月19日金曜日

ろうあ者みんなも 平和の中にしあわせに生きていく権利をもっている ろう学校授業拒否事件(3)



教育としてのろう教育・聴覚障害児教育・障害児教育
 ー 京都のほどんど知られていない障害児教育から学ぶ教育 ー

  1965年11月に起きたろう学校の「授業拒否」問題は、48年前の「過去の問題」として考えらている。

 そして、のちに資料として掲載する「3・3声明」がろうあ者団体や手話通訳関係者の間で広まっているが、その内容と経過の中でしばしばろうあ協会や当時のろう学校の生徒が主張している「教育の本質」「教育とはなにか」「教育をひとしく受ける権利」の問題は、脇に置かれた状況になっている。

 
 そのためろう学校の「授業拒否」問題もまた「聾学校は特殊な領域である」であるという骨組みに組み込まれてしまっている危惧がある。

 そのため「特別支援教育論」や「特別なニーズ論」を唱える人々は、この48年前にろう学校の生徒たちやあまりにも過酷な労働の中でも時間を切り裂いてあつまり教育を考え、教育の本質を広く国民に知らせた取り組みを注視しないでいる。

 個別ニーズと討論を重ねた上での「集団ニーズ」は、日本で取り組まれていた。

 「特別支援教育論」や「特別なニーズ論」を唱える人々がよく引用するイギリス系教育システムのごく一部分などは、すでに日本で問題提起され取り組まれてきていた。
 問題なのは、それに注視せず、無視してきた教育行政や国、研究者にあったのではないかと思わざるを得ない。

 夜明けの白々とした明るみを眺めながら、48年前の教訓を再考するために当時のろう学校の生徒の出したビラ、関係者から事情を充分聞いたことを元に長くなるが、あえてこの問題を深めるために掲載してみたいと考えた。

 同時に、これを考えるための資料を印刷して残してくれたろうあ協会のみなさんの血の滲む努力に敬意を表明しておきたい。

 以下「1,はじめに」を掲載し、次回からは、当時のろう学校高等部の生徒が出したビラを掲載したい。


  教育問題にさしたる関心を抱かず
    取組みらしい取組みもしてこなかった

 今まで教育問題にさしたる関心を抱かず、取組みらしい取組みもしてこなかったことが、この大切な人間としての願いに、このような非生産的な表現しか与えてこなかったのではないか。

 このことを十分点検し反省しないで、下手にわれわれがこの問題に手を出すとどうなるか。

 ビラの中で後輩がつたなくも触れている個人批判にひっかかり、ろうあ協会650名の会員による特定教師に対する総攻撃ともなりかねない。
 それは絶対してはならない。

 そのためには、まず事実をもっと具体的に調べる必要がある。

 後輩のビラだけではどうもよくわからないところもある。

 かくて、11月29日われわれの代表が京都府立ろう学校へおもむき学校長に会見を申し入れることとなった。

 このあとの経過は、以下の資料および本協会発行の「京都府ろうあ協会の歴史と諸問題」の記述が克明に示している。

  教育の基本問題だとする姿勢を一貫してくずさなかった

 問題はわれわれが予期した以上に大きくなり、劇的に二転、三転し、数ヵ月にわたって紛糾を重ねた。

 われわれろうあ協会としても全組織をあげて取組まざるをえず、協会の平常の事業はしばらくの問完全に麻痺した。



そうなったのは、

 われわれがこれを教育の基本問題だとする姿勢を一貫してくずさなかった

からである。

 われわれがこの問題からなにを学んだか。今の時点で整理できることは、「あとがき」の中で述べたい。

 以上の記述で明らかなように、われわれは決してはじめからこの問題の本質をはっきり把握した上で取り組んだのではない。

  平和の中にしあわせに生きていく権利をもっている

 われわれの出発点はもっと素朴なものだった。

 われわれろうあ者も等しく、日本国憲法に明記された人間としてのもろもろの権利を  享受し、平和の中にしあわせに生きていく権利をもっているという信念から、後輩の問題を教育上の基本問題としっかり捉えたところから出発した。

「あとがき」の中でのべる一つ一つの具体的な結論や教訓は、われわれが「教育問題」というきわめて未熟未経験な分野でのたたかいをすすめていく過程で、われわれの前に次々と明らかにされていったことである。

 しかし、われわれをそこまでたたかわせたものは、

「われわれ自身がろうあ者である」

という事実以外のなにものでもなかった。

 これを読まれる方々の適切なご批判によって、われわれの結論や教訓がより豊かに、より普遍的なものとなることを願ってやまない。
  
                                                                 ( つづく )

 

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