教育としてのろう教育・聴覚障害児教育・障害児教育
ー京都のほどんど知られていない障害児教育から学ぶ教育ー
日本で創造された共同教育 インテグレーション・メインストリーミング・インクルージョン ましてや特別支援教育ではなく(17)
1948年に京都府立山城高校発足(全日制-普通科・商業科 定時制-普通科)が新制高校として発足する以前は、「京都3中」としての伝統をもつ学校だった。
山城高校の教職員は、高等学校としての教育をすすめるべく努力していたのに、突然、聴覚障害のある生徒を制度的に受け入れられないか、ということについて京都府教育委員会から提起されたからびっくりしたり、とまどったのは無理がなかった。
急激にすすんだインテグレーション
ところが、1961年に京都府立医科大外耳鼻咽喉科「聴覚言語相談室」が発足。
1965年から京都府立聾学校幼稚部卒業児の一般小学校への就学傾向がすすめられ(インテグレーション)、聴覚障害児が普通校で学ぶ傾向が急増していた。
そして、普通学校としての小学校・中学校で学ぶ聴覚障害児数は、ろう学校の小学部、中学部の生徒数の三倍以上となっていた。
これに対して、京都市教育委員会は、
1966年京都市立出水小学校に難聴学級設置(固定)を決定し、京都市立出水小学校難聴学級発足。
1968年京都市立二条中学校難聴学級(固定)発足。その京都市立二条中学校難聴学級を卒業する生徒の保護者が中心になって1970年に公立高校に難聴学級設置の請願がはじめられた。
公立高校に
特別学級をつくってほしい
公立高校に特別学級をつくってほしいという請願だった。
この請願内容は、多くの難しい問題をはらんでいた。
学校教育法上などでは、高校に特別学級(特殊学級)をつくることが出来る一応されていたが、義務教育終了ということもあり、国庫補助はまったくなかった。そのため、全国的に特別学級はほとんどつくられていなかった。
しかし、京都市立二条中学校難聴学級卒業を目前に難聴学級の保護者は必死だった。
京都難聴児親の会をつくり、「公立学校に難聴学級の設置を促進する会」発足し、京都府議会に必死になって請願をした。
そのため耳鼻科医でもあった府会議員が、京都府議会で公立高校での難聴学級問題についての質問し、京都府議会で公立高校に難聴学級設置の請願趣旨採択された。
府と政令指定都市の管轄の狭間と国の締めつけ
京都府教育委員会は、普通高校に特別学級としての難聴学級を設置することを検討せざるをえなくなったが、その一方で京都市教育委員会は政令指定都市として京都市立高校をその管轄下に置いていた。
京都府教育委員会は、政令指定都市の京都市以外の京都府下の教育に責任を持っているのだからという思惑もあった。
この行政の仕組みと教育委員会の管轄の問題は、複雑なものであったが、さらにそれについて困難だったのは、難聴学級をつくればすべての費用は、京都市か京都府のどちらかだけで出さなければならない。
地方財政の窮迫している時に、独自に予算を組んで制度をつくれば、国が京都府や京都市が富裕財政があると見なして国庫補助を削ってくるということが充分予測できた。
いつの時代も同じであるが、この地方財政の締めつけは、それぞれの府市町村が独自の制度をはじめることを阻んでいた。
親、教職員、関係者の対立は
子どもたちの対立を生むことはやめようでは
さらに、難聴学級の保護者は、私たちの子どもはろう学校の子どもと違う。難聴なんだ、という気持ちが強くこのままでは、ろう学校と難聴学級の対立状況が一層激化していくという心配が、難聴学級やろう学校だけでなく障害児教育に携わる教職員の中から沸々とわき上がっていた。
京都府議会の教育長答弁でも、ろう学校は「ほとんど聞こえない」生徒が対象とされいても、ろう学校にはそれ以上に難聴の子どもが入学しているという現実があった。
親、教職員、関係者の対立は、子どもたちの対立を生む。
それは、教育としてよくないのではないか、対立ではなくもっと協力出来る関係をつくったほうがいいのではないか。
いろいろな人々が、心配し、対立ではなく、協力・共同の方向を考えた方がいいと言い出し、夜を徹して話し合いが続けられた。
難聴学級や「難聴」という言葉と
ろう学校や「ろう」という言葉を
対立的に使わないで
京都難聴児親の会も必死になって子どもたちの進路を心配していたため、多くの人々の協力や共同の方向に耳をかたむけた。
そして、京都でこれほど多くの人々が自分たちや子どもたちのことを考えてくれているのだということを知って
「公立学校に難聴学級の設置を促進する会」から、難聴学級や「難聴」という言葉とろう学校や「ろう」という言葉を対立的に表現するのではなく、
それらを「まとめた言葉」である「聴覚障害」という言葉を使おうということになり、「聴覚障害児の教育を保障する会」が結成される。
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