2012年6月7日木曜日

日本で創造された共同教育 インテグレーション・メインストリーミング・インクルージョン ましてや特別支援教育ではなく(2)


教育としてのろう教育・聴覚障害児教育・障害児教育
ー京都のほどんど知られていない障害児教育から学ぶ教育ー


 「共同学習は嫌だ!」というろう分校の四年生の聴覚障害の子。
 彼女は母親と担任にすすめられて、自信はありませんでしたが夏休み中に覚えた、たて笛を発表することにしていました。


 こころの底から
こみあげてくるうれしさ

 順番がきた時、ためらいながらも勇気を出して吹き始めました。

 その時、今までざわめいていた会場が急に静かになって、皆の視線が彼女に集まりました。
 そして真剣に笛を聞いてくれました。
 この雰囲気を誰がつくりだしたのか彼女にはわかりました。

「私は笛を吹いている時、皆の顔をすこし見ましたが少しも恥ずかしくありませんでした。最後までがんばって吹けました。うれしかったです」。

 彼女の頬は紅潮しうれしさが心の底からこみあげてくる、そんな表情でした。

「私の発表を高野の友だちと先生が『お話よくわかりました。笛たいへん上手でしたよ』と言ってくれました。私はその言葉を聞いて大変嬉しいでした」。

 高野の友達は彼女が読話できるように大きな口を開いて言ってくれます。
 彼女はやっと、高野の子ども達の前で対等に学習していける自信が持てたようでした。
普通の人の前で言える自信をつけた

 家庭に帰った彼女は、その喜びを家族にも与えました。

「大へん喜んで帰ってきました。上手に出来たのかやたらと姉に今日の出来ごとを話していました。
 高野の人とお話が出来てうれしかったとも言ってい校ました。
 本当に今日の大会で普通の人の前で言える自信をつけたようで大変喜んでいます」


と母親は電話で話してくれました。


学年集団として頑張ろう  小さい子や障害の重い子の面倒も

 このことが一つのきっかけとなって彼女は大きく成長してきます。
 1972年9月の運動会の目標づくりで、これまでは自分に視点をあてた発言だけであった殻を破って、学年集団として頑張ろうという内容の発言をしたり、白組応援のリーダー的立場でみんなの指導にあたり小さい子や障害の重い子の面倒も積極的にみることができました。

   友だちの発達を自分のことのように喜んでいる姿

 そして、運動会の当日、練習の成果を堂々と発表し、自信をもって
「上手に出来た」と言えるうになりました。
 自信がなく元気のなかった彼女が精一杯とりくみ、しかも、十分とりくめないのか友だちの発達を自分のことのように喜んでいる姿があったことに、私たちは大きな拍手を送りたい気持です。

   共同教育の概念がピタッとあてはまった

 田中昌人先生の指摘した
「障害児が学習上の基礎集団をもちつつ、必要な新しい仲間と共同に学び合つ教育機会を保障する教育活動である。
 そこに必要な複数の集団の保障と、民主的な見とおし路線の形成と必要な諸科学の総合的発展を現実のものにしてゆく活動の芽がある。従って、ここに言う共同育教は、集団の単なる分解合成であってはならない。」

ということが、ピタッとあてはまったのです。

 子どもたちが自覚的に
    活動を追求しはじめるとき成果をあげてゆく

 そしてさらに、

「注意ぶかく準備された共同活動が必要なのだということ、
 共同活動は、子どもたちが自覚的に、文化継承の基礎になる活動を追求しは じめるとき成果をあげてゆく」


ことが、彼女自身の書いた作文に現れてきた。

「9月29九日は、高野校と盲ろう分校といっしょに運動会をしました。
 私は、がんばって走ったけれどおそいでした。
 しおみさんと、かおるさんと、白はせ君と、かよこさんと、みわこさんと私はおうえんをしました。(応援合戦のこと)
 じょうずだと思いました。
 さがねさんのお友だちと色がちがうので、お話ができませんでした。
 私はちとせ(さがね)さんと色がいっしょになったら、たくさんお話ができるのにと思いました。
 私は見ました。
 いくお君は1年・2年の時、先生と手をつないで走っていましたがこんどの運動会では、一人で走りました。私はたいへんうれしかった。」
                                 (九月合同運動会の作文より)


 「子どもたちが自覚的に、文化継承の基礎になる活動を追求しはじめるとき成果をあげてゆく」

 そうなのだ、と共同教育の実践に高野小学校の教職員も盲ろう分校の教職員も共同に学習して理解を深めて行きます。

 1973年1月和歌山県で開かれた全国教育研究集会では、もう一人の人物から重要な教育上の示唆が出されます。


 それは、京都府知事蜷川虎三氏の記念講演でした。

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