2012年8月30日木曜日

今までおさえてきたものが、一挙に爆発したような開放感


教育としてのろう教育・聴覚障害児教育・障害児教育
 ー 京都のほどんど知られていない障害児教育から学ぶ教育 ー


           あらゆる先生あらゆる友達に感謝をこめて

 突然、先生に作文を書いてくれと言われた。
 聴覚障害の山城生活4年間を書いてくれと。


 耳が聞こえないので、普通の人とちょっとちがった4年間だったろうか、と先生は思ってるのだろうか。
 昔、ここにいた聴覚障害の先輩たちにも書いてくれって言ったのだろうか。
 そして、その先輩たちも書いたのだろうか。

 書いた作文を先生はどうするのだろう。
 コピーして、みんなに配る。
 又、今後の聴覚の研究に使うのかも……。
 参考として……。

 まあ、くだらないことだが、私はイロイロイロ…と考えた。

 確かに書くコト、ひき受けたケド、イヤ前言撤回!やっぱり書かんとくわ。
 自分の人生やろ。
   関係ないじゃん。
 卒業できたからそれでいいやないの、と実は言おうと思ったが……、OKを言ったとたん目をきらきらさせて

「ホントか、そうか、書いてくれるのか、」

って先生に言われたので……
何も言えなくなった。


                 ふと私は思いだした難聴学級のこと

 初めは書く気なかった。
 口先だけってコト。
 まあ、紙だけもらっといて、あとは知らん顔してよと思ってた。


 ふと私は思いだした。O幼稚園のこと。
 D小学校・N中学校のこと。

 そして、初めて山城に入った時のこと。

 なんのための山城だったのか。
 ただ高校卒の学歴をもらうために通ってきただけのものだったのか……。

 入学式は、空が暗くなる頃から始まった。

 昼間とちがうせいか、なんだか、みんな生気がないように見えた。
 帰り道がひどく暗くさびし気だったのを今でも覚えている。
 まさか、4年間続けられるとは夢にも思っていなかった。

 1学年で耳の聞こえない人は私1人だった……?
 中学校までは、耳の聞こえない者同士が集まってやってきたので、お互いわかり合っていたので、なぐさめ合い、時には励まし合ってきたが、これからは、1人。


 どっちかっていうと、不安ではあったが気が楽だった。

        この時が来るのを 楽しみに待っていたような気が

 この時が来るのを、私は楽しみに待っていたような気がした。
 

  まるで、開放感。

 今までおさえてきたものが、一挙に爆発したような気持ちがした。

 やっと自由がつかめたっていう感じ……
  なぜ……。

 今まで難聴教室という特別の組織の部屋に耳の聞こえない者同士がまとめられ、閉じこめられた?!
 つまり、おさえつけられていた。

 「え一っそんなことないですよ。」

って先生言うかも知れない。
 でも、そう感じてたの。
 他の人とちがった扱い。
 人はみな特別な扱いと言うの。
 確かに耳は悪いですよ。
 ゆっくり言わんとわからん時もあるよ。
 でも、そんな、毎日、毎日、耳が聞こえんのです。

 悪いんや。ゆっくり言ってもらわんとわからへん。
 なんぼ言ってもらわんとわからへんって考えなくてもいいじゃない。

     まあ、とにかく、自然に

「あ、私、耳、聞こえへんのやわ。ゆっくり言ってもらわんとなあっ」
て思いだしていたいのですよ。

 それを先生は

「あんたは耳聞こえへんの」
「えっ別に考えなくてもいい?」
「そんな、あきません」
「考えなあかんのですよ!!」
「ええあんたらは耳聞こえへんし、どういうふうに聞こえへんのか、ようわからへんけど、とにかく耳聞こえへんのや〃みんなとちがいます」
「ええ、ちがうんや」
「なんぼ言うてもあんたらわからへんし、それに口大きく開けなあかんから疲れるわ。口がひきつるやんか」
とまあ、よう言いました。

 つまり、耳が聞こえんことを、ず一と頭に入れて生活せよ。ってことなんです。
 まあ、頭には入れてますよ。
 でも別に、耳が聞こえんって考えんでもいいやんか。

 普通にしていて

「あっ耳、聞こえんな。やっぱ気イつけよ。」

ってポッて思いだしたらそれでいいやんか。

        なんでも耳だよ  だんだんめいわくになっちゃう

 あきませんって言う頭のかたい先生が多かった。

「あんたらは、耳、ワルイからああしなさい。あんた、耳が不自由やろ。そしたらあっちに行っといで。」

 なんでも耳だよ。
 第一に耳なんですわ。
 まあ、よくやってくれるのはありがたいですけどね、だんだんめいわくになっちゃうんですよ。


 ああしても大丈夫ってちゅ一のに、あかんやて……。
 これこそありがためいわくや。
 な一んて。
 


 まあ、いろいろおさえつけられまして?!

 なかなか、自分の思いが通せなかったんです。

 先生の言うことも正しかったケド、耳の聞こえない本人の言い分も通してホシかった。                 
                                                                              ( つづく )


                                                    Esperanza
 

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