2012年9月1日土曜日

今の私はありえなかっただろう山城定時制の4年間がなかったら


   教育としてのろう教育・聴覚障害児教育・障害児教育
 ー 京都のほどんど知られていない障害児教育から学ぶ教育 ー

 

  はち中や、そんな名前あったんかいな…

 みんな、略言葉を使う。
  初て聞いた言葉は、蟻どこの出身校?から始まった、いきなり、はち中、って言うからわからんかった。

  えっ、はち中や、そんな名前あったんかいな…。
  はちがおかっていうんや。
  知らん?
  なに一っ、はちがおか一、なんだ。
 
 なんだ。

 ホッと胸をなでおろした。

      チャリンコ   ぬくい   とぎれとぎれ   かいらし

 タク(タクシー)、ジャンボ、(ジャンボお好み焼き)、マクド、(マクドナルド)
 略言葉だけじゃなく、聞き慣れない言葉。

 チャリンコ、(自転車)。ぬくい、(あたたかい)。とぎれとぎれ、(時々)→私、初め、トイレ、トイレ?と聞きかえして笑われた。

 タベっちゃおか、(さぼっちゃおうか)。かいらし、(かわいい)とまあ、今でも、何々?、ああ…、と慣れないが、あの時は、ホンマに世の中が変になった一。
 と思ったホドでした。


    エッ耳聞こえん ホンマ知らんかったわ

 難聴のコトでのみんなの反応。

 第1に、みんなあまり関心ないってコト。


 エッ耳聞こえん。
 ホンマ知らんかったわ。


ていう人が多かった。

 なかなか話理解せんでゴメンなって言うとひと。
 うんそんなもん、気にせへんし、って言ってくれた。

 忘れられたように思ったケド、ちゃんと話す時、しっかり言ってくれたので、うれしかった。

 でも、どういう風に聞こえない。
  難聴でも千差万別があるってことわかってくれなかった。
 というより、わかってほしいっ、どうしてもって思わなかったので、イイケド。
 
                  あまりよくない  あまり真面目すぎる人

 だんだん、4年生になりますと、どうやら慣れてきまして、暗いイメージだった山城もオモシロクなりました。

 3年生の時が一番楽しくオモシロク、よくまとまっていました。
 4年生は、もう、社会人って、だんだん離れつつあります。

 難聴障害者としてどんな4年間だったか……。
 たいしてみんなとあまり変わらんでしょう。

 時々、不便だと思っただけで。
 これからの山城。
 難聴者も、入ってくるわな。
 ちょくちょくと。

 あまり真面目すぎる人もあまりよくないです。

 3日とたたない内にノイローゼとなってしまうでしょう。
 まあ、私くらいの頭を持っている人がいいわな。


 うん、ちょっとパアで、あそび好きな子がピッタシカンカン。
 なんちゃって、冗談です。


  プリント中心の勉強は
 大変正解だと思う

 私、4年間、やってこられたケド。

 きっと、先生、私のかげでいろいろいろとやってきてくれたからでしょう。
 もし、完全に私1人だけやったらここまで来れないわな。
     かも…?


 これからもイロイロイロあると思いますけ
 れども。まあ、ホッといたらいいです。
 あとは自力でやりますわ。

 普通にやってくれたらいいです。
 それだけです。


 プリント中心の勉強は大変正解だと思う。かな…。
 席は、どこでもいいわな。生徒が少いし、ましてプリント中心だし。
 そんなに深く考えることないと思う。

 慣れが必要だと思う。
 あとは、のりこえられるか、のりこえないかのどっちかですわ。

 友達は、作った方がいい。
 広く浅くでもいいし。
 イロイロイロ教えられることが多いから。

 他には…これだけ。
 また、聞きたいコトあったら聞いて下さい。


  一生の内でもっとも貴重な経験だった4年間

 山城に入ってヨカッタと思っている。

 小さい時から、イロイロイロ経験してきたが、この4年間は、一生の内で、もっとも貴重な経験だったと思っている。

 山城定時制の4年間というものがなかったら、今の私はありえない。

 あらゆる先生方、あらゆる友達、そして、山城定時制に対して、感謝の気持ち
でいっぱいである。
                       ( おしまい )

                                                                                                                       Esperanza


 次号、未完の聴覚障害生徒の文章を掲載するが、それは少し解説したい。
 
 それ以外は、ご質問にはお答えしたいが、聴覚障害生徒の書いた文章の詳細な分析はしたくない。書かれたまま読んでいただきたいと思う。

 今まで、3人の聴覚障害生徒の卒業時の文章を掲載してきた。
 これらは、生徒から表現上の意見を求められた以外は、すべて聴覚障害生徒の自由意志と自由表現に任せた。

 書いたよ、と言う文章を持ってきた時も文章を公開していいか?と尋ねてみた。するとすべての生徒が、いいよ、と言う返事だった。

 しかも、実名で掲載してくれという。
 聞けば、今の自分の気持ち、を書いたものだからみんなに自分の名前を知られてもいいし、そんなことで名前を伏せたり、ちがう名前にしたりするのはウソっぽい。
 なんで隠す必要があるの。
 自分としては書きたくないこと、絶対秘密にしたいことは書いてない。

 でも、それは隠すということではない、との返事で教師側が逆に問い詰められることがほとんどであった。
 そのため、山城高校で聴覚障害生徒を受け入れた当初から、生徒保護者の了承の下、すべて実名で聴覚障害生徒や健聴生徒の意見や感想を掲載した「山城高校聴覚障害教育 まとめ・資料」を作成し、保護者はもちろん、全国の関係教育機関・行政や各学校・高校・研究者に贈った。

 特に研究者からは、ほとんど意見を寄せられなかったが、唯一京都大学の田中昌人先生から系統的に感想と意見が寄せられた。
 そのため以降、田中昌人先生が示唆された部分も少し引用させていただく。



 

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